しょうがねえなあ

先月末のこと。4月以降について教授から
話があった。


プロジェクトは3月で終わるが、共同研究
を継続したいという企業がいくつかある。
でも研究費が無い。
そこで我々に時給制、週30時間勤務で
残ってもらえないか、という話だった。
期間は1年間。サンプルを作って企業に
評価してもらうので、今後はそちらとの
やり取りが増えるそうだ。


提示された時給だと月額では今の6割以下。
残業代も無し。ならば他の仕事と掛け持ち
で、とも考えたがそもそも週30時間で
仕事が終われる訳が無い。
今だって毎日残業してるのに。


かと言って「30時間分の成果で構わないよ」
とは絶対にならない筈だ。それどころか
「なんで出来ないんだ」と言われるに
違いない。企業に評価してもらう、という
のもあるけど何よりうちの親方がね。
現場見てないし話を全く聞かないし方針が
コロコロ変わるから。こないだもまた
新しい、やった事の無い仕事を持ってきたし。
「学生にやらせる」とか言ってたのに。


更に大学には、契約職員は原則5年までと
いう規則がある。6年目の契約が成立すれば
終身雇用の申請ができるけれど、それが
できない仕組みになっている。
いま僕は4年目なので、どうあがいても
来年末で終わりだ。
その後大学で他に仕事の口があっても、
僕が採用される事は無い。


すぐに「論外だな」と思ったが、その場で
返事はしなかった。
56歳で一から仕事を探すのは、やはり
勇気が要る。極力リスクが少ない方を、
と考えてしまうのだ。


1週間後、一緒に働いている方に聞いた。
「あの話、どうします?」
その方は60歳を過ぎていて、この年齢だと
なかなか仕事が無いからということで
継続する事にしたそうだ。
その話を聞いて決心がついた。
ちょうど教授から返事の催促があったので、
断りの連絡を入れた。
「もう、いいです」(そうは言ってないけど)


その瞬間、ここ最近感じたことの無かった
感情が湧き上がってきた。
「ああ、次に行ける!」
腹の底からふつふつと希望が湧いて出る
ような感じ。身体中に力が漲る、あの感覚。
それが帰ってきた!


正直、気づいてはいたのだ。
この1週間「どうしようかねえ」と考えては
いたものの、「また新しい事ができるぞ」と
考えるとただただワクワクしてしまう。
「そっちの方が遥かに楽しいし、僕はそれを
やりたいんだな」と思ったのである。


楽しいだけじゃ生活できないけれど、苦しい
だけでも耐えられない。同僚の話を聞いて
「すごいな」と思ったけれど、僕にはそんな
根性も責任感も無い。それも改めて認識した。
だから断ることにしたのだ。


我ながら「ダメな人間だなあ」と思う。
でも僕はそのダメさを抱えて、覚悟を持って
生きていくのだ(カッコつけんな)。