カワズくん

土曜日。県北の町、二戸がずっと
気になっていたので、撮影に出る事にした。


盛岡駅ホリデー・パスなるものを買う。
レシートは無いですか?と聞いたら、
領収書ならあると言う。お願いしたら
名前を聞かれたので「空欄で良いですよ」と
答えたら、きつい口調で駅員にこう言われた。
「駄目です」


まるでこっちが犯罪を犯したかのような
言い方。ん?と思ったが堪えて「ツルタです」
と答える。そしたら「どういう字ですか?」
と来た。なので「片仮名でいいですよ」と
答えたら「これに漢字で書いてください」と
言ってペンとメモ用紙を突き出してきた。


これは我慢しなくていいな。
書きながらこう言った。
「”駄目です”って言い方はねえだろ」


そこでやっと気が付いたようだ。
駅員の態度が変わった。
何度も「すみません」と謝ってきた。
遅いよ。


最近、こういう目に遭う事が多い。
相手は同年代から少し上のオッさん。
上が居なくなって怒られなくなって
しばらく経ち、歳下はおとなしいから
突き上げられる事も無いのかしら。
初対面の人間に対しても笑ってしまう位
傲慢で、「俺が教えてやる」とか
平気で言う奴もいる。


自分の常識が世界の常識だと思い込んで、
大したことしてないのに自分は何かを
成し遂げたと勘違いして、つけ上がった馬鹿。
世の中には色んな人がいて色んな考え方が
あって、それぞれに理由があるのに
何も知らないで決めつけて批判する無知。
ほんとに多い。
こっちにいる同級生にも多少その傾向が
あって、話していると時々絶望する。


僕はそういう人間の事を「カワズくん」と
呼んでいる。勿論、「井の中の蛙」だ。
僕にもその傾向があるので気を付けている。
気を抜いたらすぐ傲慢になってるもんな。


老いるって闘いだな、と思う。
健康面だけじゃなくて精神的にも。
「もういいじゃない」と考えてしまうのだ。
かつて神経を張り巡らしてきた事の一つ一つ
を、「もういいじゃない」で終わらせたく
なるのだ。
それが良い面に作用する事も多々あるけど、
悪くなる事もある。その見極めが非常に難しい。


「カワズくんにはなりたくない。ならないぞ」
と自分に言い聞かせる日々である。
でもこんな事を書いてる時点で、既にカワズ化が
進んでいるのかも知れない。怖いよお。