さよならdock

朝から雨。やれやれ。
いくら雨男と言ってもこんな時まで。
しかも大雨だ。俺はどれだけ行いが
悪いのか。


9時ちょっと前に引越し屋さんが来た。
3人で次々に積んでいく。写真集の
入った箱がたくさんあるのに、二箱ずつ
どんどん運んでいく。手際も良い。
当たり前だけど、すごいなあ。
引越し代が高くてキツいなと思っていた
が、この仕事ぶりを見たら文句は
言えない。むしろ安いくらいだ。
2時間半で終了。


それから一人で掃除やら何やら。
雨はまだ激しく降っている。
掃除とゴミ捨てが終わったので不動産屋
に電話して、確認してもらう。
最後は不動産屋に鍵を返して、僕が先に
出て行く形に。玄関で見送ってもらった。
なんか変だな、家主なのに。
何の余韻も無く部屋を出た。


山手の景色を目に焼き付けようと思った
のだが、雨はますます激しくなるし
雷まで鳴り出したので見る余裕も無く、
慌てて駅に入る。
これで終わり?何とも呆気ない。


友達とはLINEでやり取りしたが、
こんな時期なので会えるはずもなく、
一人で電車に乗る。
はあ。30年の終わりといってもそんな
もんか。


とにかく、ありがとう山手。
22年間、本当に楽しかった。いつまでも
ここで暮したかった。いい町だった。
また帰ってくるからね。


石川町、毎日ここで降りて赤バイクに
通った。よく13年もやってたな。
関内と桜木町、横浜は散歩と買い物の
コース。写真もたくさん撮った。


東神奈川で雨が上がった。降りて写真を
撮りに行きたいなと思ったが、手荷物が
あまりに多く、時間も無いので諦めた。


新子安、鶴見。ここを撮影した事で僕の
写真が固まった。何度も何度も撮った。
この街のおかげで僕は写真家になれた
のだと思う。本当にありがとう。
いつかまた、もう一度。


川崎。何もかもここで教えてもらった。
口ばっかり達者で反抗心が強く、そのくせ
臆病で被害妄想の塊で思い切りが悪く、
ちょっとめんどくさくなるとすぐ諦めて
逃げて言い訳ばかりしていた僕を、一から
叩き直してくれて本当にありがとう。
ここで教えてもらったから、僕は今
こうして生きていられます。
お世話になりました。


電車は多摩川を越えて、東京に入った。
神奈川がどんどん遠のいていく。
さよならdock。また会う日まで。