カミングアウト

午前中はひたすらゴミ捨てと箱詰め。
だいぶ片付いてきた。


その後床屋に行く。
山手に来てから22年間ずっと通って
きたが、多分今日で最後だ。
珍しく貸切状態。コーヒーまで
出してもらった。殿様である。


いつものように世間話をしながら
髪を切ってもらい、あとは何も言わず
に去って行こうかと思ったのだが、
何かのはずみでつい言ってしまった。
「僕、岩手に帰るんですよ」


「えーっ!」と店員さんみんなから
言ってもらったのでつい調子に乗り
(最近多いな)、今まで一度も
言わなかった話をする。
写真家やってるんですよー、だから
赤バイク乗ってたんですよー、とか。


店の人からすると僕は、通い始めた
最初は残業が多くてろくに休みが
取れない会社員で、そのうちなぜか
赤バイクに乗るようになった訳の
分からない客(『何かヘマでもした
のかしら?』)、という認識だったの
かもしれない。


隠してるつもりはなかったが、なんか
説明しづらかったのだ。
全部話して、なんかスッキリした。
「長い間ありがとうございました」
とお互いに言って店を出る。


いい場所だったな。腕は良いし、
新しく入ってくる人も含めてみんな
感じが良い。ホッとする店だった。
毎日少しずつ、終わりが近づいている。