30周年

神奈川で暮らし始めて、今日で30年になる。
30年前の今日、盛岡駅で両親、大学の先生、
先輩、同級生達に送り出してもらった。
もうそんなに経つんだな。
昨日の事みたいだ。


当時は東北新幹線の終着駅が上野だった
のだが、そこから川崎までがすごく長く
感じた。窓の外を眺めながら、
「明日からずーっとここで暮らすのか。
 信じらんねえなあ」
と思った事を覚えている。


とにかく30年だ。自分で言うのもなんだが
よくやったと思う。岩手での生活や考え方
とは異なる事が山程あって、違和感どころか
全く受け入れられないような事もたくさん
あった。会社員の時も、写真家になって
からもずっとそうだった。
だから自分を褒めたいと思う。この環境で、
この性格で(ははは)、よくやったなと。


今日は午後から、近所に住む友達とお茶を
飲みに行った。山手に来てからずっと
お世話になってきた人だ。その人とその
ご家族のおかげで僕は違和感から解放されて、
岩手にいる時と同じ、いやそれ以上に温かく
楽しい日々を過ごすことができた。
大事な大事な恩人である。


今日も楽しかったけれど、別れ際に「ああ、
当分この人には会えないんだな」と思ったら
猛烈な寂しさが襲ってきた。
俺、もうすぐ山手から出ていくんだな。
また大事なものを手放すんだな。
ずっとこんな生活だ。これを繰り返して、
結局何が残るんだろう?


頭を振って、考えを切り替えた。
「知るか。まず目の前の事をやろう」
明日はゴミの収集日だ。使う予定の無い物は
片っ端から捨ててしまおう。少しばかり
思い入れがあるものもみんな、この際処分
してしまおう。
どんなに物を減らしたって、友達と会えなく
なったって、ここで暮らした記憶は全て
僕の中に残っている。


だから……と考えたところで気付いた。
思考の出口がいつも同じだ。
進歩してねーわー、俺。