大人の飲み方

「ほとんど飲めないけれど一晩酒席に
付き合います」という人がいる。
決して義理で付き合ってる訳ではなく、
むしろすごく楽しんでいるのだが、
一晩にグラス2杯くらいで済むのだ。
これは凄いことだ。


「バーの方には悪いんですけど」と
その人は言うが、そんな事は無い。
一晩2杯で楽しみ、崩れずにいられる
なんて素晴らしい!
どうしてそのような事が出来るのかと
思い、ある酒席でその方を観察してみた。


乾杯の時点ではウーロン茶を飲んでいた。
あまり飲まない人だと分かっているので、
周りも無理には勧めない。
そうして他が何杯か飲んで盛り上がった所で、
その人達が次の酒を注文するところで、
「じゃあ私も」となるのだ。ここが上手い。


あまり飲まない人がお酒に変えると聞くと、
周りは心配もあるけど嬉しいものだ。
おお同志、てな気分になる。
無理はするな、でも飲もう一緒に、と。


そこで飲むのが案外強い酒で。
焼酎ロック、マッコリ、などなど。
店によってはチェイサーが付いたりするが、
それに頼る訳ではない。そもそも、チェイサー
が何かさえ知らなかった。
その酒をチビチビと飲る。会話を楽しみつつ。
大人だなあ。


当方はと言うと、最初から「生、生、生っ!」。
ビールが来たら「うっうっうっ」と一気に流し
込み、「この感激が薄れないうちに」と2杯目。
当然薄れるはずもなくむしろ更なるヨロコビに
溢れつつ3、4、5杯目と続く。アホである。


一晩中ビールで通すからこうなるのだ、と
ある時途中からウイスキーに切り替えてみた。
ウイスキーも好きなので。ロックで。
グラスを口元まで持って来た時に香ばしい
香りが。「ああ、いいなあ!」


グーッと飲む。チェイサーの水をカーッと飲む。
それからちょっと飲む。間髪入れずにまたちょっと
飲む。また飲む。いかん、氷が溶けてしまう。
氷が溶けたら、この素敵な瞬間が終わってしまう。
その前に、この時間をもう少し味わいたい。
なのでまたちょ、ちょ、ちょっと飲む。
グラスが空になった。おかわり!
……ダメだ俺。


大人の酒飲みにはなれないなあ。