だいぶ前の事だが、個展の搬入日や初日、
ギャラリーに行く前に必ずやる「儀式」
があった。
カツ丼かカツカレーを食べるのだ。
言うまでもなく「勝つ」にかけてる訳で。
何に勝つかというと「自分」、では
なかったな正直。
そんなカッコいいものじゃなかった。
以前は、人の見る眼が厳しかった気がする。
今もそうだろうが、以前は面と向かって
言われる事が多かった。
展示の内容だけじゃなく、問いに関する
答え方ひとつひとつもそうで、大袈裟な
言い方かも知れないが、僕自身の根っこの
部分まで問われてる気がした。
「そんな事も分からねえのかよ。ダメだな」
と言われているような気がした。
すなわち真剣勝負な訳で、まだまだ自信が
無かった僕はカツカレーなんてちっぽけな
縁起に頼っていたのだ。
「そんな事やったってしょうがねえだろ」と
思えるようになったのはいつからだったろう?
ある時から僕はカツ丼、カツカレーの縁起担ぎ
を止めた。もう必要無いと思った。
今日から展示が始まった。2冊目の写真集の、
発表記念展になる。色々冒険した本だと思う。
いま考えられるベストは尽くした。自分でも
気に入った。でもこれは闘いだ。
閉廊した後、僕は近くのカレーショップに
入ってチキンカツカレーを注文した。
小心だからでは無い。今度こそ自分に、
いや訳の分からない何かに打ち克つために
カレーを食った。さあ来い!
.......ああ、美味え。
展示の帰りに大好物のカレーを食っただけ
なのに、こんな屁理屈をこねているのであった。