Something/Anything?

トッド・ラングレンというミュージシャンが
いる。高校生の頃ラジオで「I Saw the Light」
を聴いて、一発で好きになった。
大学時代に彼のアルバムが再発されたので、
片っ端から集めて聴きまくった。


それまで僕はイギリスやドイツの、偏執狂的に
凝りまくった音楽が好きだったので、その系譜
で聴き出したのだと思う。でも全然違ってた。
なんというか、雑なのだ。


スタジオを楽器代わりに使うような、凝りに
凝りまくった音作りかと思いきや、案外雑。
演奏は全て自分でやるけれど、1曲の中で
テンポが揺れまくる。テープ編集で複雑な
構成を作るけれど、繋ぎ方が荒い。
アメリカ的な大らかさ、なのか?


でも曲と演奏と歌声はいつも美しく、
どこか不安定だけれど心を掴んで離さない。
毎日トッドばかり聴いていた。
おかしな話だが、どこか親近感を抱いて
いたのかも知れない。僕も無駄に細かくて、
かつ、かなり大雑把な人間なので。


カラーを始めた時、僕はトッドみたいに
やりたいと思っていた。見かけは雑だけど、
どうしようもなく惹かれるものになれば
嬉しいなあ、と。


今回の展示中、僕は何人かに写真のパースを
指摘され、プリントの細かい所を指摘された。
おっしゃる事はごもっとも。でも、それを
直したらリズムが変わる。そのリズムは
ワクワクしない。なのでこのままやる。


不安定だけれど美しいトッドの歌声を聴き
ながら、写真って自由で楽しいなあ、と
改めて思った。