おかえり

赤バイクの世界では新しい地域の配達を覚える事を「通区」という。
最近ある区域を通区している人が、僕にこう言った。
「それにしても○○番地の猫、面白いですねー」


え、猫?あの辺の猫って...。
「おっきな猫で、道にドテーッと寝っ転がってて...」
え?そ、それはヌ...!!
「毛がフサフサしてる猫ですよ」
ヌシだーっっ!!ヌシが帰ってきたーっ!!そ、その猫はこいつですか?


携帯で配達中に撮ったヌシを見せる(仕事せえ)。
「あ、そうそう。この猫ですよ」
ヌシだーっ!遂に帰ってきたーっ!
別の人に話しかける。「○○くーん!ヌシだあー!ヌシが帰ってきたぞー!!」
「あ、そうですか」(ったく、この人はいつも訳の分からぬ事を)
冷たくあしらわれたが構うものか。ああ、良かったなあ。


朝から休憩も取らずに仕事して、さっさと帰った。
山手駅の改札で友達を待つ。疲れた顔をして出てきた。
「おかえり」と声をかけ、駅前の喫茶店へ。
ささやかだが、誕生日のお祝いをする。おめでとう。いつもありがとう。


厳しかった夏が終わって、色んな事が、少しずつ元に戻ってきている。
おかえりなさい。