移り変わり

今日は午後から外に出た。営業だ。
まだバイクには乗れないので車で現地
まで送ってもらって、歩いて回るのだ。


年末恒例の販促月間に入った訳だが、
僕は外に出られないので営業が
できない。なので半日外に出させて
くれ、とお願いしたのである。
その為には雨樋イエティ頭ではまずい
ので、昨日床屋に行ってきた。


順番にお得意さんを廻る。大好きな犬
ロックの家の前に来た。
「おーい、ロックー」
ロックは小屋の中で寝ていたが、
ゆっくり起きて僕の前に来た。
そして、力なく吠えた。


「君も歳を取ったなあ」
顔を見てしみじみ思った。かつて
何年も撮り続けていた「釜石の犬」の
晩年を思い出した。
そうか、君もそんな歳か。


営業をしようとベルを鳴らす。
奥さんが出てきたので「いつもお世話
になっております、今年も…」と挨拶
したら、奥さんが静かに言った。
「今年はねえ、ダメなのよ。不幸が
あって」


ハッとした。旦那さんの姿が見えない
事に今更気付いた。すぐに謝った。
奥さんが少し涙ぐんだように見えた。
本当にごめんなさい。
何も言えなくなり、何度も頭を下げた。


その後も何軒か廻ったが、喪中のお宅が
さらに2軒もあった。いずれも古くからの
お客さんだ。亡くなった方も面識がある。
分からなかったとは言え、「営業なんか
するんじゃなかった」と思った。


この区域はすごく愛着がある。お客さん
にもだいぶ顔を覚えてもらったのだが、
ここ数年こういう事が増えた。
人だけじゃなくて犬や猫もいなくなった。
このブログで何度も書いたヌシも既に
いない。配達しながら思わずクスッと
笑ってしまうような、楽しい出会いが
無くなった。


「ここを離れる時期が来たのかなあ」
そんな事をフッと考えたが、すぐに頭を
切り替えた。
移り変わりの時期が来たのだ。
また新しい事が起こるかも知れない。
考えるヒマがあったら働けー。


途中、事故に遭った場所にも立ち寄った。
あんなとこで、なんで転んだんだろ?
なんでこんな大怪我したんだろ?
ま、いいか。


考えても仕方がない事ばかり考えながら、
バスに乗って帰った。