5周年

昨夜、暗室の最中に携帯が鳴った。
今回の展覧会DMのデザイナーからだ。
DMの写真が真っ黒につぶれていたのでやり直します、と
わざわざお詫びの電話をしてくれたのだった。


その事はこないだ蒼穹舎に行った際、僕も気付いていた。
「これはちょっとなあ」と思ったが、半面「仕方ないか」とも
思っていた。もともと黒っぽい写真だし、一色刷りで細部を出すのは
難しいのかも知れない。とりあえず写真の中に、何かの予感は見えるしな。


ところが大田さんにそれを見せたところ、「いや、これじゃ
違う写真になってしまうね」とデザイナーに連絡してくれたのだ。
デザイナーさんも忙しい中、すぐに対応してくれたという訳だ。


ありがたいなあ、と思った。
「これでいいじゃん。何が悪いの?」だとか「技術的、コスト的にこれが
限界なんだよ!」などと言わずに、二人とも「これじゃ違うね」と
当たり前のようにやり直してくれた事がとてもありがたかった。
「そんなの当然だろ」と思う人もいるだろうが、実はそうでもない。
だから、有難い。


今日で会社を辞めて5年になる。
つまり「フリーのカメラマン」などという、得体の知れないモノに
なって、本日で5周年という事になった。
財布の中は常に空っぽだが、こういう出来事が起きる度に
この生活を選んで正解だったと思う。
当たり前の事が当たり前に進む事に、喜びを感じるのである。


それにしても5年か。よくもったと言うべきか、まだまだと言うべきか。