備忘録その4 嬉しいひとこと

忙しくてなかなか書けない。
帰ってからも色々あるのだが、まずは
盛岡での話をできるとこまで。


8日、ってことは6日目か。
そろそろ一人で会場にいるのがきつく
なってきた頃だ。
これだけ会場に居るのは2010年の
「colored」以来だ。あの時も一人で
鍵を開け、会場に居て、鍵を閉めて
帰っていた。
ギャラリーを運営している人達からすれば
当たり前の事だが、これは時々、すごく
寂しくなるもんですね。
「なんで一人でここにいるんだろう?」
とか考えてしまうのだ。いかんいかん。


そんな時間帯に、ふらっと60代くらいの
ご夫婦がやってきた。二人でニコニコ
しながらゆっくり観てくれた。
今は盛岡に住んでいるが、元は僕と同じ
釜石の小佐野出身なのだそうだ。
そのご夫婦が「Kamaishi」の展示を観た後、
僕にこう言ってくれた。
「残してくれてありがとう」


ただただありがたく、嬉しかった。
泣きそうになった。
この展覧会をやって良かったと、
心から思った。


2011年に蒼穹舎でやったこの展示は、
その前年に、街をとことん複写する事に
徹して撮影したものである。この面白い
場所を、自分の思い入れとか無しに、
そのまま写真に残せないかと考えて撮った。
自分でもすごく気に入っている展示なのだが、
人前に出す度に自問自答する。
「誰か嫌な思いをする人はいないだろうか?」
「軽く考え過ぎてないか?」
などなど。


だからこそ「残してくれてありがとう」と
いう言葉は本当に嬉しかった。
釜石出身の人が来る度、僕はすごく緊張して
いたのだが、この一言で救われた。


いつかこの写真が、道の駅とか商店の店先に
貼ってもらえたら嬉しいなと思う。
誰が撮ったか知らないけど昔の釜石だ、
いいなあ、なんて。
店を建て替えるけど、この写真だけは残して
おくかあ、なんて。
そうなったら、僕は本望である。