Man in the Mirror

何年前だったか、友達一家の車で帰省した事があった。
車の中で聴くCDを幾つか持って行ったのだが、そこに1枚、
マイケル・ジャクソンのベスト盤を買って、持っていった。
僕らがマイケルの熱狂的ファンであった訳ではなく、
完全なウケ狙いである。中学からの同級生で、同じような音楽を
聴いてきたこの友達なら、多分笑ってくれるだろうと思ったのだ。


案の上、CDを出した瞬間にウケた。テクノやらニューウェイヴに
夢中だった僕達にとって、80年代のマイケル・ジャクソンと言えば
ベタ中のベタ、「しょーもない」以外の何物でもなかったのだ。
ジャクソン5は大好きだったが、「スリラー」「BAD」となると
全く興味がなかった。


「ぶははは、これ聴こう!」
最初のうちこそ「ポオーッ!」とか「ダッ。」などと真似して笑って
いたのだが、段々引き込まれていった。
「清潔な疫病のような」と書いたのは村上春樹だったろうか。
神経質で繊細でありながら圧倒的な存在感、そして表現力。
そこらのパンクより、よっぽど切迫して凄みがあった。


後ろの席で退屈そうに眠る友達の家族を尻目に、僕ら二人は
「すげえな」と呟いていたのである。


そして今日、「マイケル・ジャクソン死去」のニュースを聞いた。
忌野清志郎の時も思ったが、表層的なニュースばかり流す前に、
1曲でも多く彼らの曲を流して、多くの人に聴かせてくれたらなあ、と思う。
歴史やら伝説やら、余計なものが付く前に。