ハロー

今の仕事に就いて最初に思ったのは
「挨拶を返さない人が多いな」
という事だった。
挨拶を「しない」ではない。こちら
から挨拶してるのに「返さない」で
無視する人が非常に多いのである。


聞こえなかったかな俺滑舌悪いし、とか
他の事に気を取られて気づかなかった
かなとか、他の人に挨拶してると思った
のかな、とか考えたのだが、
そうではなかった。
いつ何時、一対一で会った時でも、
絶対に返して来ないのだ。


全部が全部では無い。職員さんはみんな
良い人達だし、挨拶も返してくれる。
学生はまあしないけど、それは全く
気にしない。多分社会に出れば変わる
だろうから。


問題は研究職だ。すなわち教授、准教授、
助手や研究員と呼ばれる人達がまあ
返事しない。同じ研究室でもそうだ。
赤バイクにもそういう人は居たが、
こんなに多くの人に挨拶を無視された
のは初めてだ。イジメかと思った。


知り合いにそう言うと「大学の先生って
常識無いんでしょうね」と言われる
のだが、必ずしもそうではない。
僕が学生の時の先生方は大体返してくれた。
先生の方から声をかけてくれる事もあった。
当時教わった先生で、今は理工学部内でも
かなり重要な職についている方が残って
いるのだが、この先生は相変わらず
にこやかに挨拶を返してくれる。


最初に挨拶した時なんて「どこかで見た事
のある顔だと思った」とおっしゃってくれた。
30年前の、違う研究室の学生なんて覚えて
くれている筈は無いと思うのだが、その
心遣いがありがたかった。
なので職業や立場の問題ではない。
人格と常識の問題だ。


挨拶したのに突然怒鳴られた事もあった。
見たことの無い教授だったが、玄関で挨拶
したら怒鳴られた。
「そこはスリッパを履く所じゃないだろが!」
知らなかったので素直に謝ったが、そのまま
怒鳴りながら消えていった。


50過ぎの初対面のおっさんに向かって、
たかだかその程度の事で、よく怒鳴れるもの
だなと思った。呆気にとられ、そして笑った。
すげえな。よくそれでやってこれたな。


最初は誰からも見放されたような気持ちに
なって毎日孤独だったが、慣れた。
何というかまあやはり、特殊なんだなと思って。
似たような事は他にもあって、時々「さすがに
それは無えだろ」と怒りそうになったり、
すごく悲しくなったりしたけど、慣れた。
いちいち考えるのも損だなと思うようになった。
しゃあない。


今日もちょっとあったけど、帰りに車の中で
ひと吠えしたら気が晴れた(したんかい)。
あと一日働いたら休みだ。