クラスター

昨日の昼、父が入院している病院から
電話があった。
「昨夜から発熱していて、その処置と
検査をしています。可能性は低いと思い
ますが、一応保健所からPCR検査の
キットを取り寄せましたので、今から
検査します」


胃が締め付けられた。
家族の中で一番外に出て、不特定多数の
人間と会っているのは僕だ。
かなり気を付けているつもりだが、
昨今の状況だとどこでウィルスを抱え
込んで来るかは分からない。
「可能性は低い」と言われたが、ずっと
不安だった。


幸い検査の結果は陰性で、熱も平熱に
戻ったようだ。母と二人で安堵した。
父は入院した途端に体調が悪化する事が
よくあり、病院に泊まり込んで付き添う
事が何度もあったのだが、今回はさすがに
気が気ではなかった。


岩手もコロナウィルスの感染者がかなり
増えた。今日は43人で、うち41人は同じ
病院から発生したらしい。
そんな状況なのに、駅前や電車の中は
ともかく、大学やその周辺ではマスクを
付けない人間が多い。信じられない。


1ヶ月くらい前に、同じ実験室を使っている
先生にその話をしたら、「まあこの辺は、
人と人の距離が離れているから、マスク
しなくても大丈夫だよ」と言われた。
それを聞いて「ああ。みんなそういう考え
なんだな」と思った。「これじゃ感染者は
もっと増えるな」と。


僕の職業技術者としての経歴は15年ほど
しか無いが、その中で一番痛感したのは、
「理論通りには物事は進まない」
という事だ。もう少し丁寧に言うならば、
「自分の持っている知識・経験・発想程度
では把握しきれない事が、世の中には山程
存在する。なので謙虚にならねばならない」
という事なのである。


そこを軽んじた結果トラブルに巻き込まれる
というのが度々あった。後から検証したら
トラブルに繋がる要因がちゃんとあったのに、
事前に気づかなかったのだ。
要は、無知だったのである。


なのでコスト面とか難しい事情は色々
あるけれど、「思った通りには行かないよ」
という認識だけは常に忘れないように
してきたつもりだ。
だからこういう安直な思考には抵抗がある。


過剰に防御するのも意味が無いとは思うが、
この未曾有の状況に対して、あまりに呑気
過ぎるのではないかと思った。甘いよ。
こりゃ、まだまだ厳しいぞ。