Only Reaction

先週から新しい実験が始まった。
この3ヶ月間に作り溜めてきた物質を
使って、新しい物質を作るのだ。
いよいよ本番である。


とは言え、最初から上手く行く筈は
無いよな、と思っていた。
卒業研究の時はずーっとダメだったし。
何回実験ノートに「No Reaction」と
書いたことか。


でもまあ、今思うと「当たり前だろ」
ですけどね。考えて実験してなかった
もん。深く考えずに数だけこなそうと
するのは僕の悪いところだ。
上手く行く訳が無い。


大事なのは失敗から何を得るかじゃー!
と思って臨んだ1回目。
あら、なんか出来てるぞ。しかも綺麗な
結晶が。あれ?
しかも2日はかかると思っていた最初の
工程が1日で終わった。あれえ?


浮かれるな、と思いつつも「えへへへ」
とニヤケながら反応液を濾過した。
こ、これで1つ実績ができる。ら、来年
もこの仕事に残れるぞ。へ、へ、へ。
さあ、これを溶媒に溶かして抽出して
…あれ?溶けないな。抽出、出来ないな。


でもこれは想定済み。では代わりにこの
溶媒でと……あれ?これにも溶けないの?
片っ端から色んな溶媒を試したが、どれ
にも溶けない。あれえ?


これでは精製はおろか、分析もできない。
なんかできたけど、何が出来たか確認の
しようがない。つまり、先に進めない。
俺、何を作ったんだ?砂か?


とりあえず乾燥して重さを測り、それから
固体でも出来る分析を2つ。
だがこの分析だけでは「なんか出来てます。
原料とは違うものです。でも何か分から
ないし、多分色々混じってます」
としか言えないのである。はあ。


ちょうど定例のミーティングがあったので
説明した。「なんか出来ましたけど、
これ、何でしょう?」(アホか)


教授がすぐに実験方法の問題点と考え方を
教えてくれた。それは思いつかなかった
(まあ、大抵のことは思いつかないんです
けどね)。
「それでもこの物質からは上手く行かない
かも知れませんね」と言われて火が付いた。
おおし。やったろやないか。


そして今週の2回目。色々条件を見直して、
何とか溶媒に溶ける物が出来た。相変わらず
分析用の溶媒には溶けないけれど、精製は
出来る。単離できれば他の方法が取れる。
よおおし!


と、思ったのだが。上手く行きませんなあ。
昨日今日と今一歩。難しいなあ。
この2週間、1日が過ぎるのはえらく早い
のに、1週間がすごく長く感じるのである。
さて、明日はどうしたものかな。