薄い呪い

岩手に帰って以来、気付いた事が沢山ある。
その中の1つが「知らないうちに自分で
自分に色々呪いをかけて来たな」という事だ。


元々経験に縛られてしまうところがあり、
失敗とか辛い思いをするとそれを二度と経験
したくないが故に、自らの行動を制限する
のである。


例えば車の運転。30年間一度も車を買った
事が無く、レンタカーさえ借りなかった。
フォークリフトを動かしたり赤バイクに
乗ったりした事はあるが、それは仕事だから
であって、プライベートで運転したいと
思った事は一度も無い。


なんでそこまで拒否してたのかなあ、と
改めて考えてみると、大学4年の1年間に
何度も車をぶつけたりパンクさせたりした
からだけ、なのだ。
それまではむしろ運転が好きだったのだが、
たかだか数回の失敗で自分に呪いをかけて
しまった。車を運転する楽しみを30年間も
封印してしまったのである。


今の生活は車が不可欠で、真冬の凍結した
峠を運転しなければならない事もある。
長年運転し続けていれば大した事では無い
のだが、いまの僕にとっては大きな障壁だ。
楽しみを失っただけでなく、大きな壁を
作ってしまった。すごく損をしている。


そういう「薄めの呪い」が沢山あるのだ。
改めて考え直してみると、「そんな事で
止めてしまったのかい!」と言いたくなる
事が山程ある。


ここまで書いてきたところで頭に「結婚」と
いう文字が浮かんだのだが、それはそんなに
簡単な問題では無いかな。いや、そうでも
ないのかしら。そもそも呪いだっけ?
分からんな。


最近、父の友達に会う度に「あっちゃんも
ねえ、早く所帯持たないと〜」と言われる。
その度に「もういいでしょ」と思うのだ。
結婚する気が無い訳ではない。諦めも拒否も
していないのだが、50過ぎた人間にわざわざ
それを言わなくてもいいんじゃないか?と
思うのである。


こないだまでは「そう言われるだけ有り難い」
と思っていた。
言われなくなったらダメだなと。
今でも腹が立ったり嫌な気分になる訳では
ないけれど、いい加減卒業させてほしいので
ある。僕はもう十分言われたので、もっと
若い人に言ってください。


横浜に居た頃は周りがもう少し気を遣って
くれた、というか「それ言ったらこいつ怒るな」
と思われていたと思うのだが、こっちだと
みんな親の世代なので容赦なく言われる。
もう、ほんとにお腹いっぱいなんです。
ほっといてください。


途中から話が飛んでしまった。
でも、これも呪いになってるなあ。
自分の気持ちの持ちようなんだけど。
少しずつ呪いを解いて行きたいと切に
願っている。ほんとに、もういい。