始まりの町

朝6時の電車で釜石へ。昨日家族に「(また)釜石に行くの?」と
聞かれたので、「うん。ライフワークだから」と答えた。
半分冗談だが、半分はかなり本気だ。


釜石駅にて立ち食い蕎麦を食べ、撮影開始。まずはモノクロで。
市街地は7月に来た時より撤去が進み、なじみ深い場所が更に消えてしまった。
子供の頃遊んだ公園やグランドのほとんどには、仮設住宅が建てられていた。
午後、地震の起きた時刻にサイレンが鳴った。
今日で11ヶ月。でもまだ、何も変わっていないのだ。


だが何故だろう?撮り歩くうちに、体中に力が溢れてくる気がした。
「負けてたまるか」という言葉が頭の中に何度も浮かんだ。
色んなものが無くなってしまったけれど、もう一度始めからやり直すんだ。
街中がそう言っているような気がしたのだ。
7月には絶望感しか感じなかったのに。


「外から来て、何も知らないくせに」と言われるかも知れない。
確かにこれは単なる個人的な感覚で、何の根拠も無い。嫌な思いを
する人がいたら、僕は謝るしかない。
思えば釜石は、僕が子供の頃から鉄鋼不況とともに色々と失い続けた
街だった。
でも今日は、何かが違う気がしたのだ。


夢中になって撮り続け、午後からはデジタルカラーでも撮った。
いつもと同じ場所ばかり歩いたのに、結構な量が撮れた。
それでも撮り切った気がしない。何遍撮っても、街がどんなに変わっても、
ここを撮るのは僕にとって闘いだ。
やっぱ、ライフワークかな。