ささやかな遺跡

昼休み、バイト先の先輩に付き合って外に出る。
「近くに美味しい弁当屋があるから行こうよ」と言うのだ。
いつもはめんどくさいので社内食堂で済ませていたが、
たまにはいいか、と付いて行った。


海岸通りにあるその弁当屋は、「BLACK DOCK」の撮影で
通りかかった事があった。人の良さそうなおばさん達が、何人かで
やっている。生姜焼き弁当を頼んだ。


象の鼻地区まで歩き、弁当を広げる。美味い。
よく味がしみた肉が何枚も、それに色々な付け合わせが付いて、
とても美味しい味噌汁まで付いている。満足だった。


暑い日だったけれど、海沿いなので心地良い風が吹いた。
この辺はついこの間まで雑然とした港で、僕は大好きだったのだけれど、
「Y150」だとか何とかで取り壊され、小綺麗に作り替えられてしまった。
大好きだった引き込み線も倉庫も無くなってしまった。
けれど、それでも気持ちの良い場所である事に変わりはない。


帰りに先輩が指差して言った。
「これこれ。今度の工事で見つかったんだって」
引き込み線の転回ポイント(正式な名称は分からないが、列車の方向変換
する時に使うやつ)が足元に埋まっていた。
上に透明の板を乗せて、歩いている人に見えるようにしてあった。
「明治時代に作ったやつだけど、今までどこにあったのか分からなかったんだって」
悪い事ばかりじゃないんだな。