納期

かつて勤めていた会社は化学工場で、
僕は最初製造部に配属された。
そこでは「納期」は絶対だった。
納期を遅らせる事は絶対にあっては
ならない。信用を失うことになる。


長年稼働している、実績のある
プラントでも色々あって、突然なぜか
製品スペックを外れたものがたくさん
出てしまったり、在庫が足りないのに
設備が故障したりすると、納期が
厳しくなった。そうなると原因究明、
対策検討、確認で大忙しになる。


新人の頃は「駄目なら駄目でお客さんに
謝ればいいじゃん。なんでこんなに
残業してまで対応しなきゃならんのだ」
などと考えた時もあったが、周りの人達
が必死に対応しているのを見て、それは
甘い考え、大きな間違いだと気付いた。
納期というのは約束なのだ。破る訳には
いかない。


その後パイロット・プラントに所属した
のだが、ここでは別の意味で納期の
厳しさを知った。


新製品の試作品を○Kg、何日までに
納めてくれと言われるのだが、まだ製法
が確立してないものを指定されたスペック
以内の品質で、しかもまとまった量作らな
ければならない。


ちょっと条件を変えただけで品質やら
収量がガクッと落ちたりするから難しい。
同じ製法でも生産時期が変わったり、
仕込量を変えただけでも色々挙動が
変わるのだ。それでも納期は絶対だった。
例え営業から無茶な納期を設定されても、
断る事は出来なかった(散々噛み付き
ましたけど)。


そんな事をここ数日間思い出していた。
いまDM用の写真を蒼穹舎に預かって
もらった所である。明日デザイナーさん
に渡して、DMを作ってもらう。


かなり厳しいスケジュールだったし、
どうしてもそこに間に合わせなければ
ならない訳ではなかったのだが、僕の
中でこれは「納期」だった。
期日までに、自分も相手にも納得して
もらえる内容のものを納める、という
意味で。何とか間に合った。


……とか何とかカッコつけましたけど、
昨日まで「疲れたー、できなーい」
つってビールばっかり飲んで逃げてた
んですよね。もっと大変な仕事の人は
山ほどいるし。まだまだ甘いな。