春が来た

雨が上がったので撮影に出かけた。
相変わらず盛岡を撮っているのだが、
最近は同じ所ばかり歩いている気が
したので、行った事の無い場所で
撮ろうと考えた。

盛岡駅からバスに乗って山岸へ。
あと少し行ったら知ってる場所に
合流するなという、ギリギリの所で
降りて撮影を開始した。
何も無い所だけど、いい光だ。
暖かくなってきた。風も心地良い。
春だ。春がやって来たのだ。

そう思った瞬間に、何か大きなもの
から解放されたような気持ちになった。
冬が終わったんだな、と思った。
しみじみと嬉しい気持ちになった。
ひと冬をこの土地で暮らしてきたから
こそ、感じる感覚だと思った。

とは言え、去年は分からなかった。
周りを見る余裕が無かったのである。
「雪が降らなくなったな。水抜きも
必要無いな」くらいしか感じなかった。

学生時代の僕も分かってなかったと思う。
冬を越えられた喜びを感じる回路が、
当時の僕には無かった。
それどころか、春というのは何か寂しく
なる事が多くて、辛いなと思っていた
ような気がする。秋は楽しいけど春は
辛いなと。分かってなかったな。

春が来た事が本当に嬉しくて有り難くて、
歩いているだけで幸せになった。
撮影しなくても歩いているだけで楽しい。
でも、写真を撮ったら更に楽しい。
休憩無しで６時間近く歩いた。

最初は「どう切り取っていくか」とか
考えていたけれど、途中で止めた。
行きたい所に行って、撮りたいものを
撮りたいように撮ればいいじゃないか。
何なら、撮らなくてもいいや。
とにかく歩こう。

家に帰ってデータをハードディスクに
移したが、写真は見ていない。
確信は無いけれど、１枚くらいは
良いのがある筈だと思った。
無くても構わんけど。
この季節に街を歩けて嬉しかった。
そんな撮影でした。

３年目

廊下で事務職の女性に呼び止められた。
「ツルタさん、遅くなりましたが辞令ですー。
すみません、本当は偉い方が渡すべきもの
なのに私が…」

そう言って申し訳なさそうに辞令を渡して
くれた。
とんでもない！わざわざありがとうござい
ます、とお礼を言った後でこう言った。

「ああ、良かったです〜。いやあずっと
連絡が来なかったので『俺、クビになった
んでねえべがな、こごさ居で良いのがな』
って思ってましたー。良かったー。
また働いてもいいんですねー」
そう言って笑った。

部屋に戻ってふと思った。
「俺、こういう軽口が言える人間だったん
だよなあ。忘れてた」
川崎の会社に居た頃、特に若手の頃は
こんな風によく同僚や出入りの業者さん達と
冗談を言って笑ってた。
こういう話ができるとお互い気楽になると
いうか、親しみが増すのである。
何より、仕事が楽しくなる。

赤バイクでも初めの頃はそうだったが、
そういう話が通じる人が居なくなったので
やめた。年々冗談を言わなくなっていった。
他の人は僕の事を、キツくて他人に厳しい、
とっつきにくい人間だと思っていたんじゃ
ないかなあ。会社員時代にも言われたし、
それも間違いでは無いが。

岩手に帰ってきてからは、まず人と接する
機会が極端に減ったし、他の人からもすごく
壁を作られているように思えて、ますます
無駄話をしなくなっていった。

それが最近、ちょっと変わりつつある。
２年もかかった。僕は環境に順応するのが
早い方だったので、こんなにかかるとは
思わなかったが、少し楽になってきた。

でもまあ、色んな人がいます。
いずれまた書きますけど、まだ慣れて
いる最中です。
あと２年か。それまでには何とか。

モデルナ

ワクチンを打った日の夜から軽い頭痛、
翌朝から注射痕の痛みと倦怠感があった。
頭痛は初めてだったがそれ以外はまあ
いつも通りだ。

出勤して新しい実験を仕込む。
試薬と溶媒を入れて所定の温度まで
加熱して、あとは24時間そのままという
簡単な作業だったので９時過ぎには
終わった。さて何をしようかと思った
ところでなんか熱が。

入口の表面温度計で測る。36.7℃か。
少し高いけど大した事ないな。
しばらくしてさらに熱っぽくなって
きたのでまた測る。変わらない。

どうしよっかな。急ぎの仕事は無いし、
既に頭が働かなくなってきたし。
帰ろうかな。でも大した事ないんだよな。
でもな。今回初めてのモデルナだし、
どうなるか分からんよな。

しばらく考えて、12時で帰る事にした。
教授に連絡して休みをもらう。
熱を出して仕事を早退するなんて何年ぶり
だろう？ちょっと楽しい。
家に着いてベッドに入ってiPadとか観て
いた。一応体温測っとくかあ…え、38℃？

あらま気付かなかったわあ、と解熱剤を
飲む。その直後から一気に熱が上がった。
あらあらあら、とりあえず寝ましょう。
数時間後に起きてまた検温。下がってない。

熱が出ている割には汗をかかないし、額やら
何やらを冷やしてもあまり効き目が無い。
夕食は普通に食べたけれど、後半胃がズシっと
重くなった。僕には珍しい。あれえ？
その後37℃まで下がったが、そのまま。
困ったな。明日、朝から反応処理があるんだ
けど、出れるかな。しばらく寝て、11時過ぎに
検温する……39℃だと？うそお！

動揺したタイミングで更に地震。震度３。
こんな状態で大地震が来たらたまらんなあ、
と思いながらビクビク過ごす。
幸い、短い揺れで収まった。はあ。

解熱剤を飲んだら３時頃楽になり、５時には
熱が下がっていた。
今日は普通に仕事してきました。
ワクチンを打つ前より体調が良かったかも。

それにしても変な発熱だったな。
ワクチンの影響だとすると、過去２回が
モデルナだったらどうなっていたのかな、
と考えた。過去２回より分量が少ないのに
これだもんなあ。変わらないのかな。
わからんな。

待ち時間

３月は一度も休出していない。
この１年、土日続けて休むのは月に
１回位だったので、大変珍しい。
まあ、家で報告書を書いたりは
してたけど。
今年はあまり出たくないなあ。
出たってお金にならないし。

土曜日は眼鏡を作りに行った。
いま常用している眼鏡と全く同じ、
黒縁のボストンタイプ。同じのが
もう１本欲しかったけれど（２号病
ですな）、ずっと置いてなくて
探していた。
こないだようやく入荷したのだ。
考えてみればこの眼鏡を買ったのも
２年前の３月末だったから、この時期に
発売する型なのかも知れない。
どこがそうなるのか分からんけど。

この眼鏡は量販店のものだが、数年前に
専門店でちょっと良い眼鏡を作った事が
ある。「スティーブン」と名前を付けて
（スティーブン・スピルバーグが使って
いたから）愛用していたが、最近は殆ど
使っていなかった。理由は太ったから。
無理してかけたら眼鏡がプロレス技を
かけられたような形に広がったので
可哀想になってやめた。

何とか体重が元に戻って、さらに少し
痩せたのでこないだかけてみた。
あー、こんな形でした。
でもレンズは交換した方が良いかも。

日曜日は床屋へ。前髪を切ってもらったら
眉毛の上くらいで一直線になった。
「まことちゃん」じゃねーか。54歳なのに。
でもまあ誰も気にしないからいいか。
一応少し額から浮かせた。

それで今日は月曜日。午後から近所の病院で
３回目のワクチンを打ってもらった。
いま２時間半経過した所だが、特に異常は
無い。ちょっとボーッとして来たかも。

連休って色々やれて嬉しいなあ、という話
でした（多分）。ワクチンの副作用が出る
までの待ち時間に書いてみました。
では、ちょっと眠ります。

大リーグボール

一昨日の事。
さて報告書を出すか、でもなんかあの
部分が気になるなあと思って再実験して
みたら、予想と違う結果が出てきて
さあ大変。２日かけてデータを出して
報告書を修正してチェックして、
やっと今日完成した。

章ごとにファイルを分けていたので
それを１つにして、目次ファイルに
ページ数を入れて、151ページ全部を
印刷した所に教授がやって来た。
ちょうど良かったと言うか何と言うか。
紙とデータファイルを渡して終了。
今度こそ終わった！

28日の月曜日にワクチン接種をする事に
なったので、何が何でも今日中に終わらせ
たかったのだ。副作用で頭が働かなくなる
かも知れないから。過去２回は転んで怪我
したり、丸１日ぼーっとしてたりしたので。
とにかく終わって良かった。
シーズン２年目、これにて無事終了である。

これまで何度か書いてきた「砂シリーズ」は
この報告書で終了となった。５号まで作った
けど上手くいかなかったのだ。しゃあない。
合成が上達して、収率とかかなり上がった
んですけどね。性能がイマイチで。
教授が突然「また作って」というかも知れ
ないけど、これで封印します。

今は「パルシリーズ」に専念している。
３号と４号でちょっと結果らしきものが
出つつあるのでそれを続けつつ、来月から
５、６号の合成に入ります。

……書きながら「星飛雄馬みたいだな」と
思ってしまった。大リーグボールだ。
何号作っても打たれるという。そのうち
実験している最中に「ピシッ」と音が
したりして（何を言ってるんだ俺は）。

ほぼ終わりました

やっと報告書が完成した。もう一度全部
チェックして、バラバラに書いたものを
合わせて目次にページ数を入れれば
完成だ。
とりあえず初稿ができ上がった。

去年は本文が88ページ、付録のデータ集が
34ページの計122ページだったが、今年は
今のところ本文107ページ、付録41ページの
計148ページである。我ながらようやった。

でもね。何の成果も無いのである。
去年と同じ７章構成で、１、３、５章が
新規化合物の合成、２、４、６章がそれぞれ
の化合物の性能評価、７章が総括と謝辞で
あるが、本当は書く事なんか何も無い。

第１章　作りました
第２章　ダメでした
第３章　作りました
第４章　ダメでした
第５章　作りました
第６章　少しマシかも。続きます
第７章　こんなもんでした。すみません

そんなものである。７行で終わってしまう
と４月から路頭に迷うので、頑張って書き
足した。割と書きやすい１、３、５章から
書き始めたものの、２章で訳が分からなく
なって、何度か机に突っ伏した。
先週の３連休も家で、喉を掻きむしりながら
書いていたのである。

タバコを止めてもう４年半になるが、毎年
この時期だけは吸いたくなる。
別に吸っても良いけれど、大学内は完全禁煙
なので、門の外まで行かなければならない。
自分で灰皿を持っていって１本吸って、
自席に戻ってまた仕事。やってられんのだ。
今年も何とかニコチン抜きで書き終わった。
やれやれ。

去年に比べれば楽な筈だったのにな。
書き方は分かってるし、パソコンが新しく
なったから処理も早いし。
なんでこうなるかね。
でも終わったからいいや。

下手の考え今日もまた

一昨日の地震、大きかったですね。
そして長かった。ニュースやら友達の
話を聞く限り、僕のいる岩手内陸部
よりも沿岸や関東、原発の近くに
住んでいる方々の方が遥かに大変だと
思います。まだ余震がありそうなので、
お互い気をつけましょうね。嫌だけど。

話変わって先週の事。教授が中年男性を
一人連れてやって来た。
「４月から来られる方です。ツルタさん
の後輩ですね」
いま僕の所にはもう一人研究員がいるが、
彼は去年の卒業生で、就職先が決まる
までの期間限定研究員であった。
こないだ就職が決まったので、代わりの
人が入ったという訳だ。

僕より５つ上だというその方には面識が
あった。少し前に見学に来ていたので。
僕と違って長年しっかり化学の仕事を
して来られたんだろうな、と思った。
先輩どころかこっちが教えてもらう事に
なりそうだ。
それにしても。俺、来年度もここで
働けるんですよね？

去年は年明けに「来年も働けますか？」
みたいな問い合わせがあって、２月末に
「決まりました」という連絡があった。
そういう段取りがあったので「これは
油断できないな。当然働けるとは思う
なよ」と気を引き締めた記憶がある。
それが今年は全く無かった上に、突然
新しい人が見学に来たものだから、
「俺、切られるのかな？」と思ったのだ。

54歳だからそうそう仕事は無いし、
ローンがあるし。困ったなと。
切るなら切るで早く言ってくれないかな、
と考えていた（北国の冬はそういう
マイナス思考を深めるにはうってつけ
の環境である）。

でもまあ、大丈夫みたいだ。
あと１年は間違いなくここで働けそうだ。
早く言えっての。

今のプロジェクトはあと２年だから、
よっぽどの事が無い限り再来年の春までは
働けるんじゃないかと思うが、その先は
全く分からない。プロジェクト終了と
同時に教授が定年退官されるみたい
なので、後ろ盾が無くなるのだ。

その時点で僕は56歳になっているので、
そんな年寄りの研究者を続けて雇って
くれるとは到底思えないし、大学の中で
他の仕事があるとも考えられない。
先の事なんて分からないけど、そんなに
明るい未来ではないのは間違いない。

とは言え思い詰めてもしょうがない。
先が全く見えない時は、目の前にある
事をただただコツコツやるしかない。
それしかできないよなあ、と毎日
ぼんやり考えている。

という訳で。早く書きなさいよ報告書。
今年もその時期が来たのだ。いわゆる
卒論形式のやつ。去年もなかなか書け
なくて、追い詰められたやつ。
今年も、先週の後半から毎日机の上に
突っ伏している。書けない。

家で書く方がはかどったなあと思い、
先週の土日にパソコンを家に持って
帰ったが、結局１回も開かなかった。
そんで撮影に行ったけど、大して
撮れなかった。何やってんだか。
やる事終わらせてからやれっての。

今日もパソコンを持ち帰って来ました。
明日から３連休で雪なので、家に篭って
今度こそやります……って思ったけど
春の雪なのよね。なんか撮れっかもなー。