3年目

廊下で事務職の女性に呼び止められた。
「ツルタさん、遅くなりましたが辞令ですー。
すみません、本当は偉い方が渡すべきもの
なのに私が…」


そう言って申し訳なさそうに辞令を渡して
くれた。
とんでもない!わざわざありがとうござい
ます、とお礼を言った後でこう言った。


「ああ、良かったです〜。いやあずっと
連絡が来なかったので『俺、クビになった
んでねえべがな、こごさ居で良いのがな』
って思ってましたー。良かったー。
また働いてもいいんですねー」
そう言って笑った。


部屋に戻ってふと思った。
「俺、こういう軽口が言える人間だったん
だよなあ。忘れてた」
川崎の会社に居た頃、特に若手の頃は
こんな風によく同僚や出入りの業者さん達と
冗談を言って笑ってた。
こういう話ができるとお互い気楽になると
いうか、親しみが増すのである。
何より、仕事が楽しくなる。


赤バイクでも初めの頃はそうだったが、
そういう話が通じる人が居なくなったので
やめた。年々冗談を言わなくなっていった。
他の人は僕の事を、キツくて他人に厳しい、
とっつきにくい人間だと思っていたんじゃ
ないかなあ。会社員時代にも言われたし、
それも間違いでは無いが。


岩手に帰ってきてからは、まず人と接する
機会が極端に減ったし、他の人からもすごく
壁を作られているように思えて、ますます
無駄話をしなくなっていった。


それが最近、ちょっと変わりつつある。
2年もかかった。僕は環境に順応するのが
早い方だったので、こんなにかかるとは
思わなかったが、少し楽になってきた。


でもまあ、色んな人がいます。
いずれまた書きますけど、まだ慣れて
いる最中です。
あと2年か。それまでには何とか。