泥1号

夏休みが終わって1週間。もうすっかり
元の生活に、と言いたいところだが、
そうでもない。


研究室の学生さん達は僕より1週間遅れて
休みに入ったらしく、まだ全員揃ってない。
これが困る。大学院生にお願いしないと
出来ない分析があるので、そこで仕事が
止まってしまうのだ。
なので院生を見つけると直ちにホールドして、
「すすす、すみません。ぶぶぶ分析」と
お願いしている。すみませんねえ。


休み明けから新しい実験に入った。
これまでは教授に指示された化合物(基質)を
を作り溜めして、それに新しい反応を施して
違う形に変換する、という事をやっていた。
その第一弾として出来たのが通称「砂」である。


本当はこれを高分子化して検査し、実用化
出来るかどうかの評価をするのだが、
高分子化と評価方法は学生時代には経験して
いない分野だ。一人では出来ない。
まだ人が揃っていないので、それは後回しに
して、新しい「基質」作りを始めた。


この「基質2号」は「1号」の原料によく似た
物質から、1号と全く同じ方法で合成する。
合成した前例は無いけど難しい反応でも無い
ので、割と気楽に考えていた。


問題は「基質」よりも、それを使って作る
「砂2号」だ。1号より扱いやすいものを
作りたいなあ、としか考えてなかったのだが、
そう簡単ではなかった。
「基質」の段階で早くも引っかかってしまった
のである。
出来上がった「基質2号」が、1号といちいち
性格が違っていて、前の経験が役に立たないのだ。


一番困ったのが反応直後の液だ。
ドロドロし過ぎて濾過しづらいのだ。
例えるならば焼きものを焼く時の粘土みたいな
性状の液で、濾過器にかけると水出しコーヒー
みたいなペース(ぽつん、、ぽつん、、ぽつん)
でしか水が抜けて来ない。
1号の時は2時間くらいで濾過が終わったのに
(それでもひどい方だが)、倍の時間がかかる。
今日は仕込量を増やしたのだが、濾過に9時間も
かかってしまった。クタクタである。


やれやれ、「砂」の次は「泥」かよ。
めんどくさい物ばかり出来上がるなあ。
化学は奥が深いわ。