消えていく前に

年が明けて、休みもあと1日である。
やりたかった事が色々あったけれど、
例によって殆どできなかった。
体調を崩したのが大きいけれど、
それが無かったとしてもまあ同じような
ものだろう。


元日は昼から飲んでいた。
ここ最近、一人で飲んでても二日酔いに
なったりするし、他人と飲むと後半記憶が
飛ぶことが増えた。これは良くないので
検証してみようと思ったのである(は?)。


昼から夜まで、6時間以上ビールと
ウイスキーを飲み続けた。
結果二日酔いになる事がなく、楽しく
飲み続ける事ができた。
それで気が付いたのである。
「飲むペースが早過ぎたんだなー」


毎回何かに追われるようにハイペースで大量に
飲んでいるから身体が追いつかなかったんだなー、
もう若くないしなーって事に気が付いた。
「もう飲めない身体なのかも」と思ったけど、
ゆっくり飲めばそこそこ楽しめそうだなーって。
そっか、分かったー!……今月57歳になるん
ですけどね。


先月末、職場の忘年会がありまして。
途中からほぼ記憶が無くて、覚えているのは
ただただ寒かったなという事と、何度か滑って
転んだなという事だけだった。
後から聞いたら1時半過ぎに二次会が終わった
そうで、多分始発まで3時間以上盛岡の街を
歩き回っていたんでしょうな。よく生きてたな。
で、始発に乗って(よく乗れたな)家に着いた
ところで気が付いた。
眼鏡を失くしていたのである。これで何度目だ?


最近は飲みに行く時に古い眼鏡を持っていく
ようにしていて、飲み会が始まったら付け替えて
いたのである。それを始めたら失くさなくなった。
今回は「まさか入ったばかりの会社で醜態を晒す
ことはないだろう」と思っていたが、このザマだ。


前にも書いたけれど、中学生の頃から山下洋輔
エッセイが好きだった。めちゃくちゃ面白かった
けれどどうしても理解できなかった事があった。
「なんでこの人たちは、いい大人なのに毎回
飲み過ぎるんだろう?」


二日酔いの話だけで原稿用紙50枚以上
めちゃくちゃ面白いエッセイを書くから凄いんだ
けれど、まずは「何でそんなに酔っ払うの?」
と思ったのである。
なぜ自分の限度が分からないのか、と。
僕の周りにもそういう大人がたくさん居た。
当時は「いい歳して何やってんだ」と思ったが、
いまはそんな事、口が裂けても言えない。


でもまあ、そんな大人が好きだったのである。
いま「昭和の大人」というとやたら悪いイメージで
語られがちだけれど、僕が知る限り今の大人
(僕も含めて)より遥かに温かくて面白くて聡明で、
器が大きかった。
そういう人達がいるので、卑怯な奴が口先だけで
簡単にのさばれるような世の中ではなかった。


そんな事をぼんやり考えているうちに酒が無くなった。
ヒーターの灯油も無くなったので寝ることにしよう。
みんな居なくなった。
あの人達の酒癖だけ継いでもしょうがないので
そこは直して、あのおっさん達に少しでも近づければ
いいなと思っている。手遅れかも知れないけれど。