線引き

4日間働いた。それほど忙しくは
なかったが、まあ4日間だ。


今日は仕事の後、班で飲み会があった。
歓送迎会というやつだ。
でも僕は出なかった。出欠を聞かれた
瞬間に断った。仕事で出られない
人を除けば、欠席は僕だけ。
理由は「個展が近くて準備が忙しいから」
だと言ったが、誰もまともに聞いてくれ
なかった。


「お前らとなんか飲みたくねえよ」と
いう訳では無い。進んで飲みたくは無い
けど、そこまで強く拒絶するつもりも
無い。もし嫌だとしても1杯飲めば
どうでも良くなるから。
個展の準備も、相当追い詰められては
いるけれど、それで人付き合いを放り
投げる程僕も世間知らずではない。
お金も無いけど、何とか工面できる。


では何故僕はこんな事をしたのだろう?
ここ数日考えていた。
僕には子供の頃から孤立癖みたいなもの
があるが、それとも違う。何故だ?
飲む事で人付き合いが円滑になるのは
百も承知。それに出るのが常識。
分かっている。でも、もういい。


山手駅に着いて、家までの坂道を上り
ながら気が付いた。
「線を引きたかったんだな」


バイトの時間はここまで。
切り替えたい。写真に戻りたい。
それは「俺はお前らとは違うんだからな」
という思い上がりでは無い。
もっと切実な想いである。
ここで線を引かないと写真がいい加減に
なる。ダメになる。そんな気がした。


うまく説明できないし、理解してもらえる
自信が無い。バイトの同僚には「あの人、
めんどくさいよな」と思われてるかな。
確かにめんどくさいけど。
でも、生きねばならんのだ。