我らの町

個展「MORIOKA」が終わった。
観にきてくださった皆さん、本当に
ありがとうございました。


今回の展示は個人的なものを作ろうと
思った。故郷だから、ではない。
同じように故郷を撮った2011年の
「Kamaishi」では、個人的な思い入れは
極力排除して、客観的に街を見て、
惹かれたものをカメラに収めた。
それによって街が本来持つ面白さが
写るのだと思ったからだ。
それが上手くいったと思うし、何度も
書いてきたが今だにすごく気に入って
いる。この経験が、以後の自分の写真に
大きな影響を与えてきた。


だが今回は個人的な視点にこだわろうと
思った。きっかけは「四号線」4号での
雪の写真である。中学時代を過ごした
仙北町を撮った数枚を見て、極めて
個人的な、私的な風景だけれど、いま
撮りたいのはこれだな、と思ったのだ。
この写真をどうしても使いたかったのと、
いつもよりノイズが多くて柔らかな色合い
が欲しかったので、ネガカラーを選んだ。


とは言え途中で一度迷った。独りよがり
ではないか?と。5月の撮影では客観的な
視点を意識して撮影したのだが、いまいち
ピンと来なかった。現像したネガを見て、
思ったより良いけどやはり違うな、と
感じたのでもう一度撮影することにした。
6月の撮影は「俺が俺が」という感じで
一気に進み、悔いなく終えることができた
のだ。


時間がかかったのはセレクトで、どこに
照準を定めていくかがなかなか決まらな
かった。が、大田さんがDMの写真を
選んでくれた所で初心を思い出したのだ。
いつも以上に「僕はこう見た」を徹底
しようと決めた。


有り難かったのはお客さんの言葉だった。
DMの中に写ってる人を指差して、
「これは自画像?」と言われた時はハッと
したし、「今までで一番好きな展示だ」と
言ってくれた人もいた。
そういう言葉をもらえると本当に嬉しい。


前回の個展で僕は「どこを撮っても”誰か
の町”で、それが自分の視点なのだ」と
書いたが、そうじゃないなと思った。
どこの町を撮っても自分が生まれ育った
町みたいな顔をして、「これが面白いと
思うんだよ!」と見せるのが、自分の
やり方だ。


それを独りよがりにならないように
気を付けながら、個人的な写真だけれど
観る人にとっても個人的なものに思える
ように昇華できれば良いなと思った。
「誰かの」ではなく「我らの町」だな、
と思ったのである。


長くなってしまった。
さて、次はどうしようか?うーむ。
とりあえず、またひと眠りします。