戦場の赤バイク(後編)

車を降りたら外は吹雪。視界ゼロ。
とりあえず午後指定の荷物から配る事に
する。マンションを何ヶ所か廻る。


さて。ここから次の配達先までは、
少し歩かなければならない。
荷物の入ったケースを抱えて、膝くらいまで
積もった雪の中に足を入れる。


その瞬間、強い風が。雪が舞い、目の前が
真っ白になる。僕はいま一人だ。ああ。


 我は行く
  真白の荒野をただ一人
             厚博


一句詠んでる場合かあっっ!!早く行かなきゃ
時間が無いのだ。行くぞ俺は。やるぞ俺は!
ガシガシ歩く。眼鏡が曇る。前髪が雪まみれになる。
気分は新田次郎の「孤高の人」だ、単独行だ。
いや。僕の場合「孤立の人」か。
最近そんな感じでさーって、そんなのどうでもいい!
行くぞ、おらあ!


1時間ちょっと歩き回って配達する。
何とか仕事を片付け、迎えにきた車に乗って戻る。
外の景色を見て思う。.....ああ、撮りてえなあ。
本当は配達しながらずっと思っていたのだけれど、
撮りたかったなあ。
こんな日に何をしているのだ俺は。


6時に仕事が終わった。
電車が止まっているので歩いて帰る事にした。
が、会社を出てすぐ、強風で傘が壊れてしまった。
雪はまだ降っている。ダウンジャケットの
フードをかぶり、また歩き出した。


終わった終わった。早く帰ってビールだ。