戦場の赤バイク(前編)

祈りも空しく朝から雪。
思ったよりも積もるのが早い。
これは午前中の勝負だなあ、と思いながら
配達に出る。


北国と大きく違うのは、除雪・融雪の設備が
全く無いという事。なので大きな道路でも
ほとんど雪が残っている。
おまけに雪掻きをする人もいないので(まあ
雪掻きの道具も持っていないだろうけど)、
脇道に入るとそこは未開の銀世界。
今まで経験した事の無い状態だ。


一瞬たりとも気の抜けない状況。
まっすぐにさえ、まともに走れない状態なのに、
午前指定の荷物は普段並みに多い。ひゃー。
坂道を幾つも上ったり下ったり、滑ったり
足やらタイヤやら取られながら、何とか
午前中の配達を終える。


雪がかなり積もってきたので、極力坂が少ない
道を選んで、30分くらいかけて、ゆっくり
ゆっくり会社に戻る。
ああ、無事に帰って来れて良かった。怖かった。


さすがに午後は配達できないだろ、と思ったら
「急ぎの荷物だけ配ってこい」とのお達しが。
正気か、おい。


バイクでは廻れない場所なので、途中まで車で
送ってもらい、そこから歩いて配達する事に
なった。同僚2人と軽トラに乗る。
車なんかほとんど走っていない。一面真っ白だ。


最初はにぎやかだった車内が段々無口になる。
戦場に向かう兵士のような、と言うと大げさ
だけど、なんかそんな雰囲気になってきた。


ええい、しゃあない。やったるわ。
長い坂を上りきった所で車を降りる。
.....うわあ。すごい吹雪だ。やだなー。


てな訳で、後編に続きます。