経験と継承

夕方から強い雨。いわゆるゲリラ豪雨
幸い雨が降り出す直前に配達を終える事が
できたのだが、帰ってきたら山手駅は水浸し。
靴を濡らしながら何とか改札を抜けた。


この駅でこんな光景は見た事が無い。
何故だろう?と思って新しい駅舎と、解体中の
旧駅舎を見比べてみた。


すると。坂道の下にある山手駅はどうしても
水が溜まりやすいのだが、旧駅舎は周囲を
水切りで囲い、所々に排水溝を設けて水が捌ける
ようにしてあった。
改札口の所は地面より高く盛って、水が流れ
込まないように工夫している。
加えて立地も、旧駅舎の方は周りの道に水が
分散するような場所に設置していた。


ひとつひとつ見ながら、何だかこの駅を作った
人達と会話しているような気分になった。
「分かっているなあ。いい仕事だなあ」
おそらくは色んな駅を作ってきた技術者が、
経験をもとに設計・施工したのだろう。
そんな感覚は久しぶりだったし、嬉しかった。


対して新駅舎はそういう工夫が何も無い。
水切りも無ければ排水溝も乏しく、改札口に
至っては道路よりむしろ低く、水はどんどん
入り込んでしまう。そもそも設置場所が悪く、
2つの坂からそれぞれ水が入り込んでくるのだ。


「とにかく早く作れ。安く作れ」
「いいよ、そんなの。問題ない、削れ」
そんな会議室の声が聞こえてくる気がした。
いや、そもそもそういう過去の知見を何も知らない、
知ろうともしない人間が作ったのだろう。


決めつけ過ぎかな。でもな、と思いながら家に帰る。
次の日、駅のエスカレーターが浸水で壊れていた。
やれやれ、だ。