無礼である

こないだ隣の班のおっさんに言われた。
「今度うちに入った社員さあ、ツルちゃんに
 そっくりなんだよねえ。へっへっへ」
50過ぎの小太りのおっさんに僕が似ていると、
何度も、しつこく言う。もちろん嬉しくない。


こういう時「なに言ってんですかあ」とか
「やめてくださいよお」と言って流すのが
日本的なお付き合いなのだろうが、あいにく
僕はそういうのが嫌いだ。


ましてこのおっさん、一度言い始めると毎日
しつこい。朝昼晩、仕事中に持ち出しては
小馬鹿にする。それがコミュニケーションだと
勘違いしているらしい。
他の若手がそういう目に遭っているのをよく
見るが、自分じゃなくても嫌だった。
第一、笑えねえよ。つまらん。


かと言って、「そういう○○さんもメトロン星人
似てますよねー」なんて反撃したら、それはそれで
面倒だ。
「俺、メトロン星人だもんなー」、
「ツルちゃんに言われちゃったもんなー」と
これまたしつこくてめんどくさい事になる。
なのでニコリともせずにこう言った。
「失礼です」


へ?という顔をしてなおも繰り返すので、もう一度
言った。
「だから、失礼だって」
ようやく黙った。これ以上言うと、アイスラッガー
八つ裂きにするぞボケ。


数日後、今度は別のおっさんに言われた。
「今度来た人、ツルちゃんに似てるよなー」
またかよ。今度は流すかと思った次の瞬間、
このおっさんがこう言った。
「ツルちゃんをさー、少し細くしたような顔
 してるよなー」


人に向かってよくそういう事言えるよなー。
失礼だ、と言おうとしたが間違ってこう言ってしまった。
「無礼だ」


わしゃ武士か。でもまあ、いいや。黙ったし。
狸の置物みたいな顔して人の事言えるかっての。
勧進帳持たすぞ、ボケぇ。