ノット・フォーエヴァー

異変に気付いたのは昨年秋の事だった。
新幹線に乗り、本を開いたところで文字がやたら霞んで見えたのだ。
「あ、」と思ったがすぐに「いやいやいや」と首を振る。
ほら照明がさ、紙に反射して見づらいんだってば。
目をパチパチして、本を閉じる。さ、寝よっと。


次に気付いたのは年末、暗室作業中の事。次に焼く写真のネガを
探していたのだが、ネガの端に書いてある番号がよく見えなかったのだ。
また「あ、」と思ったがやはり「いやいやいや」と思い直す。
暗いからね。それにバイトが忙しくて疲れてるんだよ。


そして今日。ちょっと調べようと思って地図を広げたら、あらま
文字がほとんど見えない。うわー。
もう見栄を張るのはやめよう。老眼鏡を借りて、もう一度見る。
....うわあ。すごくよく見える。眼鏡ってすごいなあ...って、ああっ!


ついに来た。老眼がやって来た。視力だけは自信があったのに。
いや、今でも1.5はあるんですよ。近くが見えないだけ...って
ああああっ!それが老眼だあっ!


とりあえず眼鏡だけは、格好いいものを選ぼうと思っているのである。