「繁寿」よ永遠に

昨日、近所に住む友人ユーイチからメールが来た。「繁寿がつぶれたって」。
何の話かと言うと、かつて僕らが住んでいた川崎の社員寮近くにあった
中華屋が無くなってしまった、というのである。


横浜に引っ越すまでの9年間、川崎の南加瀬という所に住んでいた。
会社が寮代わりに借りたワンルームマンションに居たのだ。
その近所にあった小さな中華屋「繁寿菜館」は、僕らにとってとても
思い出深い場所であった。


元ボクサー(!)のマスターといつもニコニコと愛想の良い奥さんが
二人でやっていて、時々娘さん(旦那はレーサー)が手伝いにきていた。
見かけはボロボロだが、滅茶苦茶美味くて安かった。中華はもちろん、
たまに出る洋食のメニューも感動する位美味かった。
よく冷えた生ビールもあって(大ジョッキ!)、これまた安かった。
ユーイチと僕は当時ほぼ毎日、ここで食って飲んだくれていたのだ。


いつも常連のおっさん連中が4〜5人居た。彼らは土建屋かなんかで、
毎晩酔っぱらってはマスターに愚痴をこぼしたりしていた。
「うんうん」と話を聞くマスターと「なーに言ってんの!」と明るく
励ますおかみさん。まるでドラマの1シーンみたいで、何とも微笑ましかった。
僕らはその中で馬鹿みたいな話をして笑い、たくさんビールを飲んだ。


店の隅にはスポーツ新聞と「ゴルゴ13」があり、一人で来た時は常連の
話をBGMにこれを読み、ビールを飲んだ。これまた心地良い時間だった。


飯が美味くて酒が美味くて居心地がいい。そんな場所はそうそう無い。
この店にいる時間はいつも幸せだった。横浜に引っ越してくる時一番
心残りだったのは、この店とお別れするという事だったのだ。


それも無くなってしまった。去年撮影しに行った時はまだあったのにな。
もう一度行っておけば良かったな、と思ったがもう遅い。
とにかく、楽しい時間をありがとうと言いたい。美味かった!
またあんな店に出会えればいいなあ。