楽しい日々を抱えて

7月3日に、久絽さんが亡くなった
という連絡を受けた。


久絽さんの事は何度かこのブログでも
書いた。
美術作家であり、新宿ゴールデン街
「久絽」という店を持っている。
僕にとって、本当に大事な恩人だ。


体調を崩していたのは聞いていた。
そこから一度は回復したのだが再び悪化
したらしい。亡くなる1週間ほど前に
齊藤明彦くんから連絡があった。
齊藤くんは「電話も面会も難しいから、
手紙を書いてみてはどうか」と言って
くれたのである。
だが情けない事に、1行も書けなかった。


手紙の代わりにブログで久絽さんの事を
書こうと考えた。でも書けなかった。
思い出は山程あって、次から次へと
浮かんでくるのだが、文字に変換する事が
できない。ただただ、こう思った。
「楽しかったなあ。笑ったなあ」


楽しい思い出しか浮かんで来ないのだ。
久絽さんは好き嫌いのはっきりした人で、
店でも誰かと言い合いになったりしていた
のだが、僕は怒られた記憶が無い。
相手にされてなかっただけかもしれないが、
笑って話しかけてくれた事しか覚えて
いない。店でも、GAW展でも、はたまた
久絽さんと一緒に参加した岩手での
「街かど美術館」展でも。
それぞれ色んな事が起きていて、中には
大変な事もあった筈なのだが、
今となっては笑っていた記憶しかない。


あんなにお世話になったのに、僕は薄情な
人間だなと思いながら蒼穹舎の大田さんに
電話した。そこで大田さんが言った一言に
救われた。
「久絽はお葬式だからといってしんみり
するのは好きじゃないかも知れないね。
みんなで飲んで歌って騒ぐ方が楽しいん
じゃないかなあ」


ああ、そうだと思った。
それで良いんだよな。
あの楽しい時間を忘れずに、時々思い出して
笑っていこうと思った。
そして何があっても写真を続けて行くぞ、
と。それが恩返しだ。
迷惑かもしれんけどな。


久絽さん、ありがとうございました。
いつか、また。