赤バイク10年

明日10月26日で、赤バイクのバイトを
始めて10年になる。


会社を辞めて約1年半は全く働かず、
その後単発のバイトをポツポツやったが
どれも長続きせずに辞めてしまった。
行く先々で雇い主と喧嘩したりして
(どこ行ってもそうだ)。


蓄えがそろそろ無くなってきたなーと
思っていたある日、近所を配達していた
赤バイクに「バイト募集中」のステッカー
が貼られていたのを見た。
週5日働くのは鬱陶しかったけど
(贅沢だな)、時給が良かったのでやって
みようと思い、すぐに応募したのである。


それ以外にも写真のプリントとか
やりたい仕事はあったが、40歳近い
無職のオッサンを雇ってくれる所など
ある訳は無く、断られ続けていた。
正直、他に仕事は無かったのだ。
応募して面接を受けて採用が決まって、
出社日として設定されたのが10月26日の
月曜日だった。個展の初日であった。


その年の春に「BLACK DOCK」という
展示をやって、ようやく自分なりのやり方
が見つかった頃で、その続編の展示だった。
神戸を中心に関西へ、3回通って撮った
写真だが、随分悩んだ記憶がある。
何とか納得の行く所まで仕上げたが、
プリント終了と同時に風邪をひき、搬入の
時には39度の熱を出した。その状態で
バイト初日に臨んだ訳である。


立っていられない位フラフラだったが、
バイト初日からみっともない姿を見せる
訳には行かない。暗い、とっつきにくい
奴だと思わせる訳にも行かないので、
無理して作り笑いを浮かべた(さぞかし
気持ち悪かっただろうなあ)。


慣れないギア付きのバイクに乗って
配達区域に行き、順路を教えてもらう。
いわゆる「通区」だが、先生である社員が
こちらが付いて行けない程のスピードで
バイクを飛ばしていくのには閉口した。
向こうは90cc、こちとら原付。
あっという間に姿が消えて行く。
待て待て待て、覚えられんがな。
それから1週間、バファリンを齧りながら
何とか仕事を覚えた。


こうして赤バイク生活が始まった。
久々の会社勤めは、意外と楽しかった。
あの頃は銀行の口座からお金が消えて
行く一方だったから、働いてお金が入る
のが嬉しくて仕方がなかった。
久々に社会の中に戻った感覚もあって、
毎朝「さあ今日も、楽しい配達の始まり
だあ!」と思いながら家を出ていた事を
思い出す。


……ま、そんな気持ちも半年しか続かな
かったけどね。