きっかけ

午後の配達に出ようとした時、国際便を4階に
運んできた青年のTシャツが目に入る。
深緑に白で動物のようなライン、背中のロゴを
見てハッとする。これは!


ちょうど同じエレベーターに乗り合わせたので
声をかける。
「そのシャツ、もしかしてXTC?」
「えっ?そうですけど知ってるんですか?」
やはり、このシャツはXTC「English Settlement」
のジャケットデザインを使っていたのだ。


「もちろん!うわあ、いいですねえ。XTCだあ」
青年も驚く。「気付いてもらったのは初めてですよ!」
だって僕はリアルタイムだもの、という言葉を
飲み込んで、どこで買ったかを聞く。
WEBらしい。なるほど。


この会社にもXTCを聴くワカモノがいるのだ、と
嬉しくなりつつ、ふと自分にも同じような経験が
あった事を思い出す。
2001年、まだプレイスMが四谷三丁目にあり、
蒼穹舎がその中で営業していた時の事だ。
写真集を物色していた僕は大田さんに声を掛けられた。
「それってさ...」


僕はその時「レイナード・スキナード」のパーカーを
着ていた。お気に入りだった。今でも持っている。
最初はロゴがデザインとして気に入って、その後で
音楽も好きになった。
大田さんは僕が音楽まで聴いているとは思って
いなかったので「へえー」となり、そこからこの
「偉大なるアメリカのイモバンド」の話が始まった
のである。


いま僕が新宿のギャラリーに出入りできるように
なったきっかけは、案外そんなものだ。
なんか、楽しかったのだ。
人が会話するきっかけって、意外とあっけなくて
面白いものだなあ、と思う。


それにしても欲しいな、あのTシャツ。