フロー・チャート

バイト先近くに、毎朝立ち寄るコンビニがある。
そこで煙草やらおにぎりやらを買って行くのだが、
そこの女性店員がどうにも無愛想で、毎日軽くイラッとする。
いや、無愛想というより無感情で機械的なのだ。


日本人では無いので言葉が上手くしゃべれないのは
分かるのだが、それにしても言葉にも表情にも感情が無さ過ぎる。
一から十までマニュアルを正確に読んでいるだけで、
コンピューターのプログラムを見ているようなのだ。


「イラッシャイマセ、オハヨウゴザイマス」
何の感情も無い。最初は「イラッシャイマセ」だけだったが、
毎日通っているうちに「オハヨウゴザイマス」が追加された。
多分僕の「来店カウンター」が規定値に達したからなのだろう。
ある値に達すると「オハヨウゴザイマス追加」となるのに違いない。


まあいいや。これください。
「Tポイントカードハ、オ持チデスカ」
無いって毎日言ってるじゃん。ほれ、顔見ろ。毎日来てるぞー。
「○○円デス」
おう...だからビニール袋は要らないって言ってるでしょ。
あーあ、入れちまいやんの。もったいねえ。
「アリガトウゴザイマシタ」
ありがたくも何とも無い口調で言われる。


これで僕に対する「接客プログラム」は終了である。
フロー・チャートはスタート地点に戻り、次の客に向けて
再開されるのだ。「イラッシャイマセ」


今日は勘定を払った後、呼び止められた。
「オカネガ、タリマセン」
なに?と振り返ってみたら、50円玉と100円玉を間違えて出していた。
「ああ、すみません」と払い直す。無言で回収される。
その後は何事も無かったかのように、次の客に「イラッシャイマセ」と
対応していた。異常時対応は完了、僕に対するプログラムは全て終了したらしい。


黙って店を出て、外のゴミ箱にビニール袋を叩き付けた。