颱風

台風11号がやって来た。朝からまあ、降るわ降るわ。
働くのは気が重いけれど、仕方がない。
覚悟を決めてバイクに乗る。


幼稚園の前を通ったら、子供達の行列に出くわした。
色とりどりの傘と雨合羽。ピンク、黄色、赤、水色....ん?
女の子ばかりじゃないか。


男の子は?と思っていると、「うぅわーっ!」という声が。
いたいた。合羽も着ず、傘をぶん回している。
嬉しくて仕方がないのだろう。僕にも覚えがある。
親が止めるのも聞かず、走る、叫ぶ、高い所によじ登る、飛ぶ。
アドレナリン湧きっぱなし。


それを冷ややかに見つめる女子幼児。「男って馬鹿よね」
これから何度もそう言われるんだぜ、お前ら。


配達を終えて帰る途中、信号待ちをしていたら、中学生の男の子が
トボトボと歩いていた。
雨はまだ激しく、風も強い。なのに壊れたビニール傘を引き摺って
ダラダラと歩いている。せめて走れよ。
時々「フッ」と寂し気に空を見上げたりする。いや、分かるけどさ。


信号が青になった。長い下り坂を走っている途中、ふと思いついて
大声を出してみた。「うぅわぁーっ!!」
結構、気持ちが良かった。