帰れない町

朝5時起床。6時過ぎの列車で釜石へ。
またか、と思われるだろうが撮りたいのだから仕方がない。
そして撮る理由らしきものも、僕にはある。


釜石の撮影は難しい。もう何度も何度も撮っているのだが、
いまひとつ納得できない。
釜石を撮るのは僕にとって常に挑戦、闘い、なのだ。


それにしても何でこんなに難しいんだろうなあと考えていたら、
5月の撮影時にふと気が付いた。僕の、心情的な問題である。
どこかで70年代の、賑やかだった頃の釜石を再現しようとしてしまうのだ。
製鉄所と海と、ワイルドで艶っぽい街と人の景色が頭の中に残っていて、
どこかであの格好良さを印画紙上に再現しようとしてしまうのである。


でも、それらはもうどこにも残っていない。
今の状態をそのまま撮ろう、と思って臨んだ5月の撮影はとても面白かった。
新しい、色んなものが見え出した気がした。
けれども、まだ何か足りない気がする。


という訳で今回の撮影である。
6時間程歩いた所で、ある事に気が付いた。なんだ、そういう事か。
心情も何もない。極めて基本的で理論的な問題だ。
余りにも基本的な、光とか影とか街の構造の話である。
「そんな事が今まで分からなかったのか!」と思ったが、気付いたんだからいいや。


撮影が難しい理由は分かった。次はそれにどう対応するかである。
僕と釜石との闘いは、まだ続くのである。