ざる中華

今日から学食のメニューにざる中華が
復活した。暖かくなってきたので冷たい
麺類が食べられるようになったのだ。
早速注文する。


僕が学生の頃には中華ざる、と呼んでた
が、早い話がざるそばの麺を中華麺に
変えたものである。つゆも蕎麦と同じで、
薬味にネギと山葵を使うのも同じ。
意外な事に、関東には無いらしい。
実際、僕も見かけなかった。
何の変哲もない食べ物だが、これが
結構美味い。癖になる。



当時、水戸から来た同級生がこればかり
食べていた。最初は「何だこりゃ」と
呆れた顔をしていたが、食べたら夢中に
なったのだ。
誇張でも何でもなく、本当に毎日それ
ばかり食べていた。


彼もそうだったが、他県から来た人間は
最初、事あるごとに岩手を小馬鹿にする。
「あれも無い。これも無い。田舎だ」と。
でも段々変わるのである。まずは食べ物
から。そして少しずつ土地に馴染んでいく。


この同級生も最初こそ「田舎だ田舎だ」と
言っていたが、いつからか言わなくなった。
盛岡が気に入ったらしい。
そして卒業後、盛岡の会社に就職した。
大学時代に知り合った盛岡の女性と結婚し、
今も盛岡で暮らしている。
長いこと会ってないけど、幸せなんだろう
なあ……なんか腹立ってきたな。


そんな事を思い出しながら、ざる中華を
食べた。春だなあ。
眼に入る景色とか食べ物は変わらないのに、
一人だけ取り残されたような気持ちに
なる事が時々ある。
でもまあ、そんなもんだ。
5分で食べ終えて、実験に戻った。