スタジオ

色々積もり積もってきたようだ。
何からどう説明したら良いのか分からない
けれど、生活の中でやたら孤独を感じる事
が増えた。


多分気の持ちようだったり行動で対応できる
事なのだが、それが上手くできない。
そうなると僕は自分の悪い所を責めて勝手に
世間から自分を隔離し、ますます追い込んで
しまう所がある。


それが結構厳しい状態になってきたので
これはいかんと思い、昨日の夜家族に言った。
「急ぎの用事じゃなければ明後日に廻して。
明日は一日外に出たいので。よろしくね」
何も考えずにひたすら歩き、写真を撮り
たかった。


いつもと同じ電車に乗って盛岡へ。
まずは大学へ。今日中にどうしても
終わらせておきたい実験操作があったので、
それをやる。2時間ちょっとで終了。


それから撮影へ。
気の向くままに歩く。今日は撮り慣れた
場所から極力離れようと考えた。
茶店でひと休み、というのも止めた。
ただただ写真が撮りたかったのだ。
雫石川沿いに街からどんどん離れていった。


やがて見覚えがある道に出た。
中学から高校にかけて、バンドの練習をする
為に楽器を運んでいた道だ。
メンバーの親父さんが工場をやっていて、
その脇に社宅があったのでそこにドラムやら
何やらを運び込んで練習していたのだ。
家から片道2時間近くかかっただろうか?
とにかく遠かった記憶がある。


河川敷のそばで周りには家も無く、社宅には
既に誰も住んでいなかったので、大音量で
楽器を鳴らす事ができた。楽しい場所だった。
工場を閉じてしまった事は知っていたが、
あのアパートはまだあるのだろうか?


記憶を辿りながらひたすら歩く。が、実際の
場所は記憶よりもさらに遠かった。30分程
歩いてようやく辿り着いた。36年ぶりだ。
建物が見えた瞬間、色んな記憶が一気に
甦ってきた。特に最後の1年は、何を
やっても上手くいかない時期だったなあ。
ひたすら自分を責め続けていた記憶がある。


36年前の時点で既に誰も住んでいなかった
このアパートは、今や崩壊寸前の廃屋だ。
草むらの中に、ようやくという感じで
存在していた。
2階の一番手前の部屋が僕らの「スタジオ」
だったのだが、階段は朽ちて蔦が這っていて、
近付くことさえできなかった。


しばらくアパートの前に居て、何枚も写真を
撮る。自分の為に記録を残した。
その後近くのイオンモールで昼食でも、と
思って入ったが、土曜日なのでどの店も行列が
できていたので諦める。バスで肴町に行き、
いつもの喫茶店でコーヒーとピザトースト
頼んだ。


積もり積もったものが簡単に消えてしまう
訳ではないけれど、少し気持ちが落ち着いた。
また来週、盛岡を撮りに来よう。
掴み所が見えなくて難しい撮影だけれど、
とにかく続けて行こうと思ったのである。