行き帰り

盛岡駅から大学まで、毎日歩いて通って
いる。帰り道はその日の気分で色んな
ルートを通るのだが、行きはいつも同じだ。


駅を出て旭橋を渡り、材木町を抜けて岩手
高校の前に出る。そこから梨木町を通って
山田線の踏切を越え、農学部の門から大学に
入る。
岩手大学は全ての学部が同じキャンパスの
中にあって、農学部を抜けると図書館、
中央食堂、人文社会学部、教育学部、体育館
と続き、道路を越えた向こうに僕が働く
理工学部がある。


教育学部の向かいにあるグラウンドでは
いつも、ラクロス部が朝練をやっている。
遊び半分のサークルではなく、かなり真面目に
練習している。
毎朝ハードにトレーニングする人達を見るのは
随分久しぶりだなと思い、いつも不思議な
気持ちになる。


理工学部向かいにあるコンビニでコーヒーを
買い、化学棟の裏にある地域連携センターに
入り、自室のオートロックを開けて中へ。
ここまで30〜40分くらい。今の僕にとって
唯一の運動である。


学生の頃も同じルートで毎日通っていた。
高校も、ここからさらに長い坂を上った
所にあったので、かれこれ7年同じ道を
通っていた事になる。


高校の時は「絶対に岩手大以外に行くぞ」
と思っていた。同じ道をあと4年も通う
なんて耐えられないな、と。
その割には勉強しなかったので(そういう
人間だ)、その岩手大もギリギリで何とか
引っかかったのである。卒業も、留年こそ
しなかったがギリギリだった。


そんな事を思い出しながら実験室へ。
昨日冷蔵庫に入れておいたサンプルは、
「寒天」から「シャーベット」に変化して
いた。よしよし、これなら上手く行くかも。
分からないけど。


室温で置いてあったサンプルも冷蔵庫の中
に入れて、大学を出た。
帰りにmujinaへ。この部屋は割と涼しい。
写真集を保管するには良い場所だな、でも
冬はかなり寒いんだろうな、と思う。


クーラーを効かせてしばらくのんびりする。
もうすぐ夏休みなので、ここで1日泊まり
たいな、と思った。せっかく借りた部屋
なのにもったいない。久しぶりに一人で、
ビール飲んでダラダラしたいなあ。


2時過ぎにmujinaを出たら良い光だった
ので、写真を撮りながら駅に向かった。
夏の匂いがする。また色んな記憶に浸って
いたのだが、すぐに思い出した。
「マスク忘れた」


mujinaに戻ってマスクを付けて、汗だくに
なりながら駅まで歩いた。
いつもと少し違うけれど、夏が来た。