マーティン・バックパッカー

先月帰省した時に、ギターを持ち帰って
きた。マーティン・バックパッカーという
小型のギターだ。
20年以上前に川崎の、今は無い楽器屋で
手に入れた。


当時雑誌やテレビで忌野清志郎が弾いてた
ような記憶がある。いわゆる「トラベル・
ギター」、どこにでも持って行ける気軽な
楽器、であった。しかもマーティン製。
コンパクト=小型・高性能好きの僕はすぐ
欲しくなり、それほど高くなかったので
手に入れたのだが、これがめんどくさい
楽器であった。


形が変わっているので、肩からストラップ
で吊るさないと弾けないし、そうやっても
何か弾き辛い。
音も何だかペカペカしていて、すぐに
飽きてしまった。
かと言って売っても大した額にはならない。
しばらくは横浜に置いてたのだが、全く
弾かないので数年前に岩手に持って帰り、
実家の、自分の部屋の隅っこに置きっ
ぱなしにしていた。


が。今年の3月に帰省した時、ふと思い
出して弾いてみたらすごく面白い音がした
のである。ブルースっぽい?何とも味が
ある音だなあと思ったのだ。何時間も
夢中になって弾いていた。なので先月、
持ち帰ったという訳だ。


今は暇さえあれば、もしくは何かしながら
これを弾いている。すごく楽しい。
小さい楽器なので、弦も細いやつを張って
いる。そうすると、普段弾けないような
フレーズが出てきたりして飽きないのだ。


なんでこんなに印象が変わったのだろう?
と考えた。ひとつは音の趣味が昔より
広がったのだと思った。買った当時は
もっと芯がある音が好きで、こういう
ちょっとチープな音の良さやそういう
音楽が分かってなかったなと。


もう1つは僕の弾き方だ。当時はピックで
ガシガシ引っ掻くような弾き方だった。
力が入り過ぎてた。最近はもう少し無駄な
力が抜けてきたし、何より指で弾く事が
多くなったので、自分が出す音自体が少し
変わっていた。その結果、指弾きの方が
この楽器の音色には合ってたんだな、と
言う事に気付いたのだ。


小さいギター1本でもこれだけ印象が
変わるんだから、写真だどうなるのかなあ
なんて考えた。プリントもそうだし、
撮影だって同じ場所でも撮る度に違って
見えるしな。
そんな事を考えながら、ギターを抱えた
まま寝てしまった。