ブレている

朝起きたら雲ひとつない快晴だった。
当てが外れた。


昨夜まで数日ずっと雨だった。
土曜日は晴れるという予報だったので、
これは盛岡でよく見る、そして僕の
写真によく出てくる、青空に雲が
ガアッと大量に浮かんだ景色が見られる
かなと思っていたのだ。久々にそれが
撮れるかなと期待してたのに当てが
外れた。ちぇ。


でも撮影に行く事にした。
諸事情により(説明しにくいわ)
今日は一日撮影に出る必要があった
からだ。8時の電車に乗る。


まずは諸事情の一つ、大学へ。
作業をちょっとやる。最近また新しい
基質を作っていて、それがまた3段階
反応で、1段階に6日を要する。
それを作らないと本題に入れないので
必然的に休出が増えているのだ。
めんどくさ。


ささっと終えて撮影へ。大学を出て
北に向かう。途中で今まで歩いた事の
無い道を見つけたので入ってみる。
期待外れの天気だったので、どうせなら
色々試してみようと思った。


何にも無い住宅地であった。
でもなんか面白い。なんか惹かれる。
それを形にできないかと考えながら
撮っていたのだが、ふとこう思った。
「なんでこんなの撮ってるんだろ?」


何が面白くて撮っているんだろう?
これを撮って人前に出してどうする?
盛岡特有の景色でも無いし。
記録?いやいや、これを残す必要なんか
あるのか?


そう考えたらめちゃくちゃ面白くなって
きた。無駄だよなあ。何の足しにも
ならない。これを見て面白いと思う人
って、そうそういないだろう。
でも、だからこそ、面白いのだ。
無駄だから楽しい。写真って最高だな、
と改めて思った。


何だか元気が出てきたので、更に歩く。
面白い。天気とか関係ない。
数時間歩いて、バスに乗って盛岡の
南側に移って、また撮った。


写真を撮っていると色んな考え方が
交錯する。「記録に徹したい」と切に
願う日もあれば、今日みたいに
「そんなの関係ねえ」となる日もある。
「盛岡にこだわる必要もないよな」
と思ったり、「でも今はやはり盛岡を
きっちり集中して撮ろう」となったり。
ブレにブレているのだ。


まあ、いいか。それはセレクトしたり
プリントする時にしっかり考えよう。
今はとにかく撮ろう。写真を撮るのは
最高に楽しいから。

左脳と左脳

僕には腕組みをする癖がある。
家族や友人、特に女性陣からは
「それ、偉そうだからやめなさい」
と時々言われる。


そんなつもりは無いと言っても
注意されるのでちょっとイラッとして、
「”偉そう”なんじゃない。ほんとに
 ”偉い”んじゃボケ!」
と返したくなるのだが、そんな要素は
自分のどこを掘っても出てこない。
なので「はーい」と答えてグッと飲み
込むのが常である。


その腕組みであるが、最近僕の組み方が
変わった事に気が付いた。
元々は左腕が上になるように組んでいた
のだが、ここ最近、無意識のうちに左腕
を下にして組むようになった。
何だっけ、これ?右脳だか左脳だかの
話だっけ?
もう一つ指の組み方というのもあって、
僕は常に左親指が下になっている。
こちらは変わってない。


で、調べてみた。
現在は「腕組みは左腕が下、指組みも
左親指が下」であるが、これは「論理的に
捉え、論理的に処理する」タイプらしい。
「物事を筋立てて真面目に考えるタイプ。
几帳面で努力家」だと。嘘つけ。


今までの「腕組みは右腕が下、指組みは
左親指が下」だと「論理的に捉え、感覚的
に処理する」タイプなそうだ。
「理想と現実のギャップに苦しむ自己矛盾
型。転じて細かいことは気にしないタイプ」
……そっちじゃねえの?身につまされるわ。


それにしても、長年の習性がなんで今頃
変わったのだろう?仕事の影響かな?
論理的にやらないと何やってるのか分から
なくなる仕事ではある。
とは言え毎日、理想と現実の狭間で
ウンウン唸ってますけどね。
そろそろ何とかしたいものだ。

漢方薬

昨日、盛岡の漢方薬専門店に行ってきた。
鼻がね、副鼻腔炎がまた悪化してまして。
息苦しいのである。


鼻が悪いと上手く発音できないから
意思が伝わらなくて困る。
人によってはイラつかれたり、馬鹿に
してきたりする。


軽く見られるんですかね。鼻が悪くて
上手く発音できないと、結構からかわれる。
「何言ってんのか分からないよー」とか
口調を真似されたりとか。
身体的な特徴をからかったりしないような
人でも、これに関しては平気でからかって
くる。大した事じゃないと思っているの
かな。結構傷付くんですよ。


イラつく人、というのも結構いる。
「何言ってんだか分かんねえんだよ」と。
言いたくても言えねえんだよ。
でもまあ、僕のキャラクターもあるん
だろうな。僕自身もその人に対して
同じような事をしたかも知れない。
自業自得なのかな。


数日前に学食で注文した時、通じなかった
らしくて食堂のおばさんに4回
聞き返された。最後は半笑いで、
「だからさ。何言ってんのか分から
ねえんだよ」って感じだった。
辛かったので治療を再開する事にした。


去年は病院に通ってたのだが、また
同じ病院に行こうとは思わなかった。
数ヶ月通ったけれど、症状を薬で抑え
込んでいただけで、治っている実感が
なかったからだ。


医者の対応もそうで、「なんか分からない
けどまた薬出しとくわ」という感じだった。
その割には結構強い薬だったみたいなので
また行こうとは思わなかった。
他にも良い病院はあるだろうけど通うのが
大変だから漢方を試してみる事にした。


という訳で仙北町の薬店へ。
有名な所で、こっちではラジオ番組を
持っていたりする。ここで売ってる花粉症
の薬を長年使っているが、よく効くのである。
早く長く効いて、眠くならない。
高価なので毎日飲む訳にはいかないけど、
横浜に居た時も実家から送ってもらっていた。


面談して、それから調合してもらった。
本当は煎じ薬が一番効くらしいのだが、
面倒なので顆粒にしてもらった。
とりあえず2週間分。高いので。


まだ2日しか飲んでないけど、少し楽に
なった。そんなに急に効くわけでは
ないので気のせいだと思うけど。
完全オーダーメイドの薬ではなくて、
ブレンド品を更に混ぜたみたいだけど、
それでも自分専用に調合してもらった
薬なのでなんか嬉しい。
これで治ればいいなあ。

ハロー

今の仕事に就いて最初に思ったのは
「挨拶を返さない人が多いな」
という事だった。
挨拶を「しない」ではない。こちら
から挨拶してるのに「返さない」で
無視する人が非常に多いのである。


聞こえなかったかな俺滑舌悪いし、とか
他の事に気を取られて気づかなかった
かなとか、他の人に挨拶してると思った
のかな、とか考えたのだが、
そうではなかった。
いつ何時、一対一で会った時でも、
絶対に返して来ないのだ。


全部が全部では無い。職員さんはみんな
良い人達だし、挨拶も返してくれる。
学生はまあしないけど、それは全く
気にしない。多分社会に出れば変わる
だろうから。


問題は研究職だ。すなわち教授、准教授、
助手や研究員と呼ばれる人達がまあ
返事しない。同じ研究室でもそうだ。
赤バイクにもそういう人は居たが、
こんなに多くの人に挨拶を無視された
のは初めてだ。イジメかと思った。


知り合いにそう言うと「大学の先生って
常識無いんでしょうね」と言われる
のだが、必ずしもそうではない。
僕が学生の時の先生方は大体返してくれた。
先生の方から声をかけてくれる事もあった。
当時教わった先生で、今は理工学部内でも
かなり重要な職についている方が残って
いるのだが、この先生は相変わらず
にこやかに挨拶を返してくれる。


最初に挨拶した時なんて「どこかで見た事
のある顔だと思った」とおっしゃってくれた。
30年前の、違う研究室の学生なんて覚えて
くれている筈は無いと思うのだが、その
心遣いがありがたかった。
なので職業や立場の問題ではない。
人格と常識の問題だ。


挨拶したのに突然怒鳴られた事もあった。
見たことの無い教授だったが、玄関で挨拶
したら怒鳴られた。
「そこはスリッパを履く所じゃないだろが!」
知らなかったので素直に謝ったが、そのまま
怒鳴りながら消えていった。


50過ぎの初対面のおっさんに向かって、
たかだかその程度の事で、よく怒鳴れるもの
だなと思った。呆気にとられ、そして笑った。
すげえな。よくそれでやってこれたな。


最初は誰からも見放されたような気持ちに
なって毎日孤独だったが、慣れた。
何というかまあやはり、特殊なんだなと思って。
似たような事は他にもあって、時々「さすがに
それは無えだろ」と怒りそうになったり、
すごく悲しくなったりしたけど、慣れた。
いちいち考えるのも損だなと思うようになった。
しゃあない。


今日もちょっとあったけど、帰りに車の中で
ひと吠えしたら気が晴れた(したんかい)。
あと一日働いたら休みだ。

まとめモード

今月から写真のセレクトを始めている。
AFTER THE RAIN」以降、2014年
から2020年3月までの写真である。


ここまでの写真で本を1冊作るつもりだ。
資金が無いからいつ作れるか分からないし
あったとしても今撮っている盛岡の方を
優先するかも知れない。でも、写真を
選んでプリントするまでならいつでも
できる。


他にも「BLACK DOCK」発表後、2008年
から2012年までのモノクロとか本にしたい
写真がたくさんあって、それらは良くても
個展で発表した所で止まっている。
それではいかんなと。


本当は横浜に居るうちにやろうと思って
いたが、結局出来なかった。新しい写真を
撮る方に気持ちが向かっていたし、
お金が無いのを気にし過ぎて、今やれる
事をやってなかった。


岩手に来てからも、既に2年手を付けて
いない。このままだと一生やらないかも、
という状況だった。
今年は個展をやらないので、チャンスだな
と思ったのである。


そしてもう一つ。自分の生活とか感じ方が
最近少し変わってきている感覚がある。
「岩手モード」に入ったというか単に
老いただけなのか(ははは)。
そういう意味でも自分の写真を見直す良い
機会だと思う。


とか偉そうに語りましたけどね。
連休中に作ったCaptureOneのファイルが
一度使えなくなりまして。
パソコン内のフォルダを整理したら写真が
全部オフライン表示になって編集できなく
なったのだ。
前にもあった事なので直そうとしたら、
ソフトもパソコンも新しくなったので
色々変わっててやり方がわからず、
結局全部消して一から作り直しました。


きちんとマニュアルとか調べずに勘で
動かしている奴は、時々こういうミスを
犯します。
「でもまあ、おかげで新しい視点で
写真を選び直す事ができたし」とか
言ってポジティヴに捉え、進歩無いまま
明日へ進んでいく訳です。今回もそう。
ま、いいか(そこそこ!)。


肝心の写真だが、結構忘れてた。
でも選んでいるうちにその場所を歩いて
いた時の感覚を思い出してきた。
駅を出た時の空気とか、そこからどこに
進んだかとか、この日は撮れなくて
色々工夫したな、とか。


今は2016年の和歌山撮影に入ったところ
である。ちょうど6年前の撮影だ。
そんなに経つんだなあ!
なんかクセが強い撮り方をしてます。

何者でもなく

夕方、ギターが届いた。
こんなに綺麗だとは思わなかった。
特に金属部品がピカピカ。
使っている木材も良いし、仕上げも
綺麗だ。びっくりした。


まずはアンプを通さずに弾いてみた。
いやあ、鳴る鳴る。
YouTubeで観た時はサスティーンの
少ないギターかと思っていたが、
伸びる伸びる。


それからアンプへ繋ぐ。このギターは
リアのピックアップだけセイモア・
ダンカン社のJBという機種に交換して
いる。高出力で有名なピックアップだが、
元々付いていた残り2つのピックアップ
の方が遥かにパワーがあって好きな音
だった。すごいな。


今まで使っていたBacchusがクリアで
繊細な音だとすると、このギターは
ちょっとパワーがあって「オラオラ系」
である。面白い。
思いきって注文してみたものの、正直
不安だった。試し弾きしてないし。
ちょっとしたギャンブルだった。
お金無いのに。だからホッとしたと
いうのが本音である。


ギターを買うのは17年ぶりだ。
写真家になって一度だけ、2005年に
買った。フェンダーメキシコのストラト
そうか、あの時もストラトか。
だいぶ前に売ったけど。


そのストラトは黒に白ピックガード、
メイプル指板で、早い話がエリック・
クラプトンのブラッキーである。
それが欲しかった訳ではなく、たまたま
その仕様になっただけだが。
今回のはその逆だ。白に黒ピックガード、
ローズ指板。


なんか知らないがパンクっぽいデザイン
だなーと思ったらラモーンズですね。
あれはモズライトだけど。
シド・ヴィシャスもそうか。
あれはプレジション・ベースだけど。
コーネリアスが使ってるのも同じ色だな。
あれはムスタングだけど。
全然同じじゃないな。


これは日本独自で作った仕様のストラトで、
スケールは通常より短いミディアムで、
フレットも22フレット。ギブソンと同じ
である。
つまみはトーンが1個少なくて計2個。
ピックアップはシングル2発にハム1発。
ストラトなんだかサイクロンなんだか、
はたまたデュオ・ソニックなんだか。
カート・コバーンみたいな改造もされて
いるし、良くわからないギターである。


「どこにも行けないけど行く気も無い」
ギターだ。なんかいい。
気に入ってしまった。

思考の脈路(ギター編)

やってもうた。ネットで中古ギターを注文
してもうた。あれだけ「ギターは実際に
弾いてみないと買えない」って言ってた
のに。特に中古はそうだ。
丸一日迷って、でも発注してもうた。ああ。


ここに至るまでのTrain of Thought、
思考の脈路というのがありまして、まず
僕はずっとエレキギターを探していた訳です。
それもFenderストラトキャスターを。
ここでも何度か書きましたが。


一番欲しかったのはFender USA製の
American Professional IIというシリーズで、
昨年上京した際に弾き比べして惚れ込んで
しまったのだ。でもこれ、20万円くらい
するんですね。パソコンの更新もあったし、
その他色々出費があったのでどう考えても
手が出ない。この先もカツカツで、
余裕は無い。でも欲しい。
毎日楽器屋のHPを観ては「きいーっ」と
なっていたのである。


きーきー言いながら22,3年前に盛岡で買った
Bacchusという国内メーカーのストラト
毎日弾いていた。でもこれが結構良いギター
だった。汚れがあったので5万円位で買えた
のだが、調べてみたら定価は10万円だった。
今は廃番だが中古でも人気らしく、いまだに
9万円くらいする。当たりだったんだ!


で、路線変更。Bacchusのギターは現在も
品質が高くて評判が良い。2万円以下で
買える物でも、YouTubeで見る限り結構
音が良い。これを買って改造してみたい
なと。ピックアップとか交換したら
楽しそうだ。


しばらくその検討をしていたが、ある日
気づいた。「いつか絶対に飽きるな」
昔もそういう事があったのだ。
数千円のアコギを買ってきて改造したり
したけど、すぐ飽きた。
後ですごく後悔した。ギターに申し訳
ないなと思ったのだ。やめよう。


でもなー、やっぱギターほしいなー、と
思っていた矢先、昨日ネットで見つけた。
'86年製Fender Japanストラトキャスター
色々変わったスペックを持つ変なストラトで、
リア・ピックアップもセイモア・ダンカンの
JBに交換されていた。


最初から改造されてて、しかもそれは僕が
やろうと思っていた改造と同じ。
カラーはホワイトに黒ピックガードで、
一番欲しかったやつ。
おいおいおい、待て待て待て。
それはすごく欲しいぞ。


シリアルナンバーがEから始まるギターで、
この「Eシリアル」期のFender Japanは
フジゲンという会社が作っていた。
この時期は、本家USAのギターもこの会社
で作られていたのだ。


70〜80年代にフジゲン、Greco、Tokai等の
作ったギターは「ジャパン・ヴィンテージ」
と呼ばれていて、海外でも評価が高い。
僕が長年愛用している94年製のFender
Japanテレキャスターも、調べたらこの
会社で作られた物だった。


そんなギターが送料込み49,800円で売って
たら、そりゃ欲しくなるわ。あと5千円
高かったら買わない。絶妙である。
サイトでは「中古」ではなく「ヴィンテージ」
と分類されていたが、49,800円のヴィン
テージって聞いた事無い。新品の半額だぞ。
そこも気に入ってしまった。
スペックと値段は申し分無し。でもなあ、
弾かなきゃ分からんしなあと悩みに悩んで、
さっきようやく決めた。


以上がここまでの思考の脈路でした。
考えに考えたようで、「絶対にギターを
買うんだからな」という決意だけは一貫
していた。結論は決まっていたのだ。
ウダウダ考えてただけでした。おしまい。